近年、再発または難治性B細胞リンパ腫に対するCD19抗原標的CAR-T細胞療法が注目を集めています。この治療は、患者自身のT細胞を遺伝子改変し、がん細胞を攻撃する力を持たせるものです。しかし、治療後に喉頭浮腫という合併症が発生することが多く、この問題の解決が求められています。
今回の研究は、日本のある医療機関で、2020年9月から2023年9月までの3年間にTisa-celを用いたCAR-T療法を受けた59名の患者を対象に行われました。その結果、11名が喉頭浮腫を経験しました。この発症がどのような因子によって引き起こされるのかを調査することが目指されました。
研究の結果、喉頭浮腫の発症リスクが高まるのは、輸注するCAR陽性細胞の数が一定量を超える場合や、エフェクターメモリーT細胞の割合が高い場合であることが明らかになりました。具体的には、CAR陽性細胞数が3.4×108個/μLを超えるとリスクが上昇することが分かりました。
喉頭浮腫は、気道閉塞を引き起こす可能性があり、放置すると重篤な状況に陥ることもあります。そのため、早期発見が極めて重要です。同研究では、喉頭浮腫の出現を予測するための因子を同定し、早めの治療がいかに予後を改善できるかを示すことができました。
また、この研究では、喉頭浮腫にはステロイドホルモンが有効である一方で、生体内のCAR-T細胞数に与える影響も調査されました。デキサメタゾンが喉頭浮腫に対して効果的で、CAR-T細胞に多大な影響を与えないことが確認されました。一方で、メチルプレドニゾロンではCAR-T細胞数が減少することが分かりました。この知見は、新たな治療指針を提示する可能性があります。
今後の研究では、さらなる長期的な経過観察や他のCAR-T製剤についての解析が進められ、多くの難治性血液腫瘍患者に対する治療成果が期待されます。この研究の成果が、多くの患者に希望を与え、治療に繋がることを願うばかりです。
この記事を通じて、CAR-T療法の現状とその合併症への理解を深め、医療従事者や患者にとって有用な情報となることを目指しています。