AIやARで新たな顧客体験を提供するウォルマートの戦略
2023年10月9日、米国の小売業界の巨頭であるウォルマートが新たに「アダプティブリテール戦略」を発表しました。時代が変化し、顧客の期待も多様化する中で、ウォルマートはどのように顧客に対して個別需要に応えるショッピング体験を提供していくのでしょうか。
顧客のニーズに適応する新戦略
この戦略は、顧客の好みやニーズに応じたショッピング体験を実現することを目指しています。AIや生成AI、AR技術を駆使して、単に商品を売るだけではなく、顧客一人一人に合った最適な買い物を提供することが狙いです。
特に注目すべきは、従来の検索バーにとらわれず、顧客の個別の好みや要望に適応する新しい接点を重視している点です。このアプローチにより、店舗やオンラインの枠を超えた新しい顧客経験が創出されることでしょう。
店舗とオンラインの新しい連携
ウォルマートは、共通のグローバルコア機能を開発することで、複数の事業分野に渡って一貫した顧客体験を提供することを目指しています。これにより、顧客は迅速に行動を起こせるようになり、リテールの最前線で新たな顧客接点が生まれることが期待されます。
仮想空間での新たな収益ポイント
また、ウォルマートは仮想世界においても顧客との接点を持つことで、新しい収益ポイントを開拓しています。AIを活用し、オンラインストアのパーソナライズを実現するための「コンテンツ意思決定プラットフォーム」を開発し、顧客の好みを理解した上で、生成AIを用いて適切なコンテンツを提供していきます。
このプラットフォームは2024年の年末までに米国で導入される予定で、次いでカナダやメキシコへも展開される計画となっています。特に、オンラインストアに訪れる顧客には自身専用の店舗のような体験を提供することが目指されており、買い物がよりパーソナルなものになると考えられています。
新しい買い物体験の実現
そのうえで、ゲームや仮想空間における買い物体験は今後も拡充されていく見込みです。ウォルマートが開発したARプラットフォーム「Retina」を活用し、生成AIやオートメーション技術により数万点の3Dアセットを生成。没入型コマースAPIによって、仮想ソーシャル環境にウォルマートのショッピング体験を組み込むことが可能となり、新たな形の買い物が現実のものとなるでしょう。
さらに、米国内のウォルマート店舗ではすでに10種類以上のAR体験が展開されており、今後もカナダやメキシコ、チリなどにそのコンセプトが広がることが期待されています。
パタゴニアやザラの新しい取り組み
一方で、同じく小売業界で注目されているパタゴニアは、「新品」と「リユース品」を統合したコマース体験を推進しています。これにより、顧客が新品と中古品を同時に比較できる仕組みを実現し、サステナブルな消費を促しています。コーチの取り組みやザラのリユースプログラムも、環境への配慮と新しいビジネスモデルの模索に貢献しています。
小売業の未来
現在、小売業界は科学とアートの融合を求められており、テクノロジーだけではなく、消費者が求めるエンターテイメント性が不可欠です。ダグ・スティーブン氏が提唱するように、科学を減らし、アートを増やすことで、より記憶に残る消費体験の提供が可能となるでしょう。
ウォルマートのアダプティブリテール戦略が、今後の小売業界にどのように影響を与えるのか、さらなる動向が注目されます。