東京都美術館で新たな展覧会が開幕
2024年7月20日、東京都美術館で「大地に耳をすます気配と手ざわり」という新しい展覧会が始まりました。この展示は、現代アーティスト5人が自然との深い関わりを探求し、人間の生活の中で忘れられがちな大地の息づかいを感じ取ることを模索するものです。この展覧会は、特に都市生活者が抱える脆弱性や、自然との距離感に焦点を当てています。
展覧会の背景
担当学芸員の大橋菜都子氏は、「東日本大震災や新型コロナウイルスの感染拡大など、大都市での便利さとその脆弱性を感じる出来事が続きました。今回はそれに触発され、自然とのつながりをより意識した作品を集めました」と語っており、展覧会は5人の作家の個人的な経験から生まれています。
参加作家と作品
参加作家は、川村喜一、ふるさかはるか、ミロコマチコ、倉科光子、榎本裕一の5名です。川村喜一のインスタレーションは高い天井の開放感があり、北海道知床半島の自然を肌で感じ取れる作品が展示されています。彼の作品には、自身のアイヌ犬ウパシとの生活や、狩猟によって自然に深く入る体験が表現されています。
ふるさかはるかは、北欧の遊牧民サーミの文化を意識した木版画を展示し、青森での自然との共生をテーマにした作品が並べられています。北欧から得たインスピレーションを元に、自然の素材を使った作品は、彼女の深い感受性が伺えます。
ミロコマチコの作品は、奄美大島での彼女の生活を反映したもの。自然の動きや生命感を捉えた作品は、彼女の即興的な制作プロセスを通じて展開されています。特に、奄美の自然を表現した《島》の中心に設置されたインスタレーションは、圧倒されるほどの迫力があります。
倉科光子は、東日本大震災以降の植物の変化を観察し、その結果を作品にして表現。彼女の描いた植物は、地域の緯度と経度からインスパイアされたものであり、観覧者に深いメッセージを伝えています。
榎本裕一は、根室での風景を描いた作品を通じて、自然の厳しさと美しさを表現。特に彼の新作《結氷》では、アルミニウムパネルを用いて冬の景色を描写しています。
展覧会の意義
この展覧会は、写真や木版画、油彩画、インスタレーションなど多様な作品を通じて、日常生活では忘れられがちな人間としての本来の生態系との関わりを再認識させる機会となっています。作品のひとつひとつが、自然との永続的なつながりを思い起こさせる内容となっており、訪れる人々に新たな感覚をもたらすでしょう。
また、展覧会の付属として、奄美大島で手染めされた泥染めの布が図録に付いており、これもまた参加作家ミロコマチコの制作に用いられている素材から来ています。
展覧会開催概要
- - 会期: 2024年7月20日(土)~10月9日(水)
- - 会場: 東京都美術館 ギャラリーA・B・C
- - 観覧料: 一般 1,100円、大学生・専門学校生 700円、高校生以下無料
- - 特別協力: 株式会社ツガワ
- - 公式サイト: 東京都美術館
訪れた人は、自然を感じ、アートを通じて自身の内面と向き合うことができるでしょう。