光ファイバを活用した新技術の研究開始
日本のインフラは、高度経済成長期に設置された設備が多く、老朽化が進んでいることが大きな課題です。特に、埋設管による道路陥没は年間で1万件を超え、その原因の一つに地中空洞の発生が挙げられます。この状況を受け、国土交通省が推進する「令和7年度 上下水道科学研究費補助金」の制度により、NTT東日本、東京大学生産技術研究所、鹿島建設、東京都下水道局、東京都下水道サービス株式会社(TGS)が共同で一つの研究プロジェクトを始めることとなりました。
研究課題の概要
本研究は、光ファイバケーブルを利用したセンシング技術を用いた地中空洞の検知に焦点をあてています。特に、地下2メートル以上の深さに生じる空洞を早期に発見する技術開発が目的です。従来方式では、深度が深い地中空洞の検出が困難であり、そのために新たなセンシング技術が求められていました。今回の研究では、光ファイバを用いることでより精度の高い検知を可能にし、地域住民の安全と安心を守ることを目指します。
本研究の目的と手法
本研究の中心となるのは、通信用地下光ファイバケーブルと下水道光ファイバケーブルを用いて、地盤振動をセンサーとして捉えるモデルを構築することです。このモデルを使用することで、深部での異常を迅速に検知することが可能になり、その結果、道路陥没などの人的被害を未然に防ぐことが期待されています。研究は2025年7月から2028年3月までの期間にわたり、多くの専門機関が協力し合い実施されます。
各機関の役割
プロジェクトにはNTT東日本を筆頭に、各機関が特定の役割を担っています。NTT東日本は光ファイバセンシングデータの収集、およびモデルの構築と実証を担当。東京大学生産技術研究所は空洞化メカニズムと実験を行い、鹿島建設は地盤工学に基づく解析を担っています。また、東京都下水道局はその維持管理に関する知見を活用して空洞調査の評価を行い、TGSは下水道光ファイバケーブル運用の技術的支援を行います。これらの連携によって、次世代の空洞検知システムが生まれることが期待されます。
期待される成果
この研究により、地中深くに潜む空洞の早期発見が可能になることで、地域の安全性が飛躍的に向上することが期待されます。これにより、道路陥没やそれに伴う事故を減少させる効果が見込まれ、ひいては地域住民の安心感の醸成につながります。また、得られたデータは今後のインフラ整備や維持管理において重要な情報源となるでしょう。
光ファイバを用いた地中空洞検知技術の研鑽が進む中、これからの取り組みに大いに期待が寄せられています。日々変わりゆく社会において、私たちのインフラを守るための新たな第一歩が始まりました。