住宅設備のCO2排出量削減に貢献するヒートポンプ給湯機の潜在力
ヒートポンプ・蓄熱センターは、戸建住宅や集合住宅における設備のエネルギー消費量とCO2排出量、そしてコストに関する試算を実施し、その結果を公表しました。
この試算では、2030年度の全電源平均・電力排出係数を0.250kg-CO2/kWhとして、将来のCO2排出量を試算しました。さらに、2020年度のCO2排出係数を用いて、住宅設備のイニシャルコスト、ランニングコスト、トータルコストを比較分析しました。
戸建住宅と集合住宅における試算結果
戸建住宅では、2030年度の試算において、ヒートポンプ給湯機が他の給湯器と比較してCO2排出量が少なく、特に昼間の沸き上げ機能を持つヒートポンプ給湯機が最も省CO2という結果になりました。
2020年度を基準とした比較においても、ヒートポンプ給湯機「昼沸」が最も省CO2であり、トータルコストにおいても優位な結果となりました。
集合住宅では、2030年度の試算では、戸建住宅と同様にヒートポンプ給湯機が他の給湯器よりも省CO2という結果となりました。しかし、2020年度を基準とした比較では、ハイブリッド給湯機が最も省CO2となりました。コスト面では、ガス給湯器潜熱回収型の住宅がトータルコストで優位でした。
ヒートポンプ給湯機の訴求ポイント
省エネとCO2排出量削減の観点から
ヒートポンプ給湯機は、機器単体の省エネ性能が高く、供給電源側のCO2排出係数低減効果も相乗的に働き、住宅のカーボンニュートラルに貢献します。
ヒートポンプ給湯機「昼沸」は、昼間の電気使用量増加により、再エネ出力制御時にディマンドリスポンスによる更なる再エネ電源の有効活用に貢献します。
コストの観点
カーボンニュートラルに貢献するヒートポンプ給湯機は、イニシャルコストが高いという課題があり、機器導入時の支援が必要です。特に集合住宅では、手厚い支援が必要と考えられます。
日本全体への普及による削減効果
2050年カーボンニュートラルに向けて、住宅用ヒートポンプ給湯機の普及を想定し、日本全体のエネルギー消費量とCO2排出量の削減効果を試算しました。
2020年度における試算では、ヒートポンプ給湯機を家庭CO2統計による普及率と国勢調査の世帯数に基づいて日本全体に展開した場合、一次エネルギー消費量とCO2排出量を大幅に削減できることが分かりました。
2050年度の試算では、ヒートポンプ給湯機の普及拡大、機器効率の改善、一次エネルギー換算係数とCO2排出係数の変化を考慮しました。その結果、
一次エネルギー消費量:現状固定シナリオと比較して約860万kL削減(約29%削減)
CO2排出量:
現状固定シナリオと比較して約2,900万t-CO2削減(約85%削減)
* 足元2020年度と比較して約8,300万t-CO2削減(約94%削減)
という削減効果が見られました。
ヒートポンプ給湯機の普及促進に向けて
ヒートポンプ給湯機は、機器単体の省エネ性が高く、供給電源側のCO2排出係数低減効果と相乗的に働き、日本全体のカーボンニュートラルに大きく貢献する可能性を秘めています。
しかし、イニシャルコストの高さは、普及に向けた課題として残ります。政府や民間企業による導入支援策の充実が、さらなる普及促進を後押しすると期待されます。
まとめ
ヒートポンプ・蓄熱センターによる試算結果から、ヒートポンプ給湯機は、住宅のCO2排出量削減に大きな貢献を果たすことが期待されます。省エネ性とコスト面における課題克服に向けた取り組みが、今後の普及拡大のカギを握ると言えるでしょう。