HR戦略の変遷と離職率に関する重要な調査結果
日本の経営コンサルティングの先駆者として知られる株式会社タナベコンサルティングが、全国の企業経営者や人事担当者を対象に実施した「2025年度 人材・組織の取り組みに関する企業アンケート調査」の結果を発表しました。この調査は、企業の業績状況や人事戦略に与える影響を明らかにする重要なものとなっています。
調査の概要
調査は2025年6月に行われ、有効な回答を得た企業は242社にのぼりました。このデータを分析することで、企業の業績とHR戦略の関連性を探ることが目的とされています。具体的な調査結果は以下の通りです。
業績別のHR戦略の違い
調査の結果、企業の業績状況によって注力すべきHR戦略が異なることが明らかになりました。業績が不調な企業では「戦略的な人材配置・活用」や「人材の定着・エンゲージメント向上」が重要視されている一方、業績が好調な企業では「人材採用の強化」と「次世代リーダーの育成」が求められています。このことから、企業はその成長ステージに応じた人事戦略を考える必要があることが示唆されています。
人事体制の成熟度と人的資本の可視化
次に、人事体制を分析した結果、企業の規模が大きくなるにつれて専門的な人事部門が設けられる傾向が見られました。特に大企業では「CHRO(最高人事責任者)」や「HRBP(HRビジネスパートナー)」の設置が進んでおり、そこから得られる人的資本の可視化や貢献指標の評価が行われています。それに対し、中小企業では依然として経営者や総務部門が人事業務を兼任している場合が多く、専門性の向上が課題として浮かび上がりました。
離職率の低い企業の特徴
調査結果はまた、離職率が低い企業においては「上司と部下の対話促進」や「柔軟な勤務制度の導入」が進んでいることを示しています。具体的には、離職率が5%未満の企業では、上司と部下の対話を重視する施策が58.1%を超える実施率を見せており、コミュニケーションの充実が社員の定着に寄与していると考えられます。このことから、企業は内部コミュニケーションの強化とともに柔軟な働き方を模索する必要があります。
額面通りの人材の採用と育成
また、調査は今後重視される職種として「営業・マーケティング職」や「エンジニア・IT関連職」が挙げられ、企業の成長を支える人材採用が急務であることが分かります。採用戦略を見直すことで、企業の業績向上に繋がる可能性が高まります。
離職理由の背後にある要因
離職理由に関する調査結果では「人間関係」や「処遇への不満」が高い割合を占めており、職場環境や待遇の改善が望まれることが明らかになっています。特に、上司と部下のコミュニケーションや待遇面に配慮しないと離職を招く可能性があります。このような現象は、企業の文化自体に深く根ざしているため、組織全体のマネジメントにも影響を与えることになります。
総括と提言
調査結果を総括すると、企業は戦略的人事体制への移行や中堅社員、管理職層の育成に注力する必要があるといえます。このように、人的資本経営を実効性のあるものとするためには、企業戦略としてHR戦略を再定義し、経営の中心に据えることが肝要です。 今後、日本企業のHR戦略がどのように変化し、成長を遂げていくかに注目が集まります。