公務員のマネジメント能力向上に必要なスキルの明確化
背景
日本において公務員は、複雑化する経済や社会課題に対応するために、かつてないほどの公務遂行能力が求められています。しかし、非効率な業務慣行や自己スキルへの不透明感が影響し、中堅・若手公務員の離職が進んでいます。そのため、行政組織は新卒採用の強化だけでなく、離職防止や外部人材の採用、さらに退職者の復帰をスムーズに行うための「リボルビングドア」の整備が必要とされています。
こうした人材流動化に対応するためには、公務員が求められるスキルを明示することが極めて重要です。そのスキルを取得し、キャリア開発を進めることで、職務の魅力向上に繋がります。このような流れを受け、株式会社日本総合研究所と株式会社グロービスは共同で「行政官のスキル明確化とアップデートに関する研究会」を立ち上げました。
研究会の設立と目的
2024年7月に設立された本研究会は、現役・OB公務員と民間の有識者から構成され、主に公務員に求められるマネジメントスキルの明確化に焦点を当てました。特に、各省庁で共通して必要とされるスキルですが、まだ明確に定義されていない「マネジメントスキル」に関する議論が進められています。
スキル明確化の意義
公務の意義や魅力を示し、組織の生産性を向上させるためには、公務を遂行するためのスキルを明確にする必要があります。特に、従来型の「運営」から、環境変化に対応可能な「経営」という考え方へのアップデートが求められています。管理職の意思決定能力を高め、個人の資質に頼らない能力開発を進めることが目的です。
必要なスキルの分類
本研究会では、公務で求められるスキルを4つのカテゴリーに分け、具体的なスキルを抽出しました。これにより、民間企業の管理職に必要なスキルとの共通性も確認され、民間で既に行われている研修メソッドの活用が可能であることが示唆されました。
スキル取得とその支援制度
公務員が効率的にスキルを取得し、能力開発を果たすためには、組織全体での戦略的取り組みが必要です。具体的には、職務と求められるスキルを明示し、研修体系の整備が肝要とされています。また、eラーニングやケーススタディの導入など、多様な手法を検討すべきです。
人事施策への展開
スキルの明確化とその取得促進は公務員の生産性向上やパフォーマンス向上の起点です。そのため、スキル情報を人事施策に活用することが求められます。例えば、スキルを昇進や昇給の判断材料にするなど、適切な人材配置が実現されると予想されています。
今後の展望
本研究会は、今後も関係する中央官庁や地方自治体との対話を持ち、さらなる提言を行う予定です。その中で、スキルの精緻化や海外・民間事例の収集にも取り組む考えです。また、公務員教育においてマネジメントスキルの取得と能力向上を支援することが狙いです。
まとめ
公務員のスキル明確化は、日本の行政の未来に大きく寄与するものです。この取り組みが成功すれば、公務員の離職問題の改善や新たな人材の確保につながり、より魅力的な職場環境が整うでしょう。これからの展開が非常に楽しみです。