血栓症リスクを抑制する画期的なコーティング技術
脳動脈瘤の治療において、低侵襲な血管内治療が主流となりつつある中、ステント併用コイル塞栓術は高い安全性と有効性が認められています。しかし、ステントによる血栓形成のリスクは依然として課題です。従来の抗血栓性コーティングは、タンパク質の吸着を抑制することで血栓の発生を抑える一方、細胞の接着を阻害するという課題がありました。
産総研、JMPR、N.B. Medicalの共同研究チームは、この課題を克服するため、血中の非凝固系タンパク質を優先的に吸着させることで、ステント表面での血液凝固反応を抑制する新規抗血栓性コーティングを開発しました。この技術は、従来技術とは異なる原理に基づいており、抗血栓性を発揮しながらも細胞接着性を向上させるという画期的な成果を達成しました。
細胞接着性の向上による治療期間短縮と患者の負担軽減
細胞接着性の向上は、ステントが血管に取り込まれる速度を増加させることを意味します。ステントが血管内に早期に取り込まれることで、治療期間の短縮化が期待できます。治療期間の短縮は、患者にとって大きな負担軽減につながります。さらに、抗血小板剤の服用期間も短縮できるため、出血性合併症のリスクを低減し、患者さんのQOL向上に貢献すると考えられます。
医療費削減への貢献
抗血小板剤の減薬は、医療費の削減にも大きく貢献します。従来は、ステント治療後、長期間にわたって抗血小板剤を服用する必要があり、医療費負担が大きくなっていました。本技術によって抗血小板剤の服用期間が短縮化されれば、医療費の削減につながり、医療費の抑制に貢献する可能性があります。
世界展開に向けた取り組み
研究チームは、今後、N.B. Medicalにて、このコーティング技術を応用した脳動脈瘤治療用ステントの薬事承認取得を目指します。また、米国や欧州への展開も視野に入れ、世界各国での薬事承認取得を目指して開発を進めていきます。
脳動脈瘤治療の未来
本技術は、脳動脈瘤治療の安全性と有効性を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。今後、臨床試験等を通じてその効果が実証されれば、脳動脈瘤治療の新たな標準治療として広く普及していくことが期待されます。