1on1 MTGでの本音を引き出すための課題と解決策

近年、多くの企業が部下の成長を支える手法として「1on1 MTG」を取り入れています。この形式は、主に上司が部下の成長を促進するための対話の場として設けられていますが、実際には多くの課題が浮かび上がっています。最近の調査から明らかになったのは、参加者の半数以下がこのMTGで本音を語っていない、という厳しい現実です。この問題の背景には、信頼関係の不足や会話ができる雰囲気の不在があげられます。

調査内容とその結果

MENTAGRAPH株式会社が実施したこの調査では、全国のビジネスパーソン724人に対し、1on1 MTGにおける率直さや会話の内容について意見を集めました。その結果、本音で話せている部下はわずか11.3%にとどまり、さらに33%は「重要なことはほぼ話せている」と感じていましたが、実際には多くの部下が控えめに発言していることが分かりました。

上司側では、自己評価として「すべて率直」と考える人は10%程度に過ぎず、重要なことを話せていると感じている比率も42.7%と、部下よりも楽観的な見解を持つ傾向が見られました。この認識のギャップは、率直なコミュニケーションを阻害する要因となっていることが示唆されています。

本音が語れない理由とは

調査では、部下が率直に話せない理由として以下のような回答が上位に上がりました。

- 何を話してよいかわからない（38.1%）
- 上司との信頼関係が十分でない（31.4%）
- 人事評価に影響する可能性がある（27.1%）
- 話した内容が他人に伝わる可能性がある（24.6%）
- 雰囲気が話しづらい（16.5%）

このように、評価やプライバシーへの不安が大きな要因となっており、さらにアジェンダが適切に設計されていないため、会話のすり合わせが課題として浮かび上がります。

上司と部下の話題の認識ギャップ

1on1 MTGで話したいことの選択肢に対する部下と上司の反応を比較すると、多くの項目でおおむね一致しているものの、上司側は業務運用に関連する話題が優先される傾向が見えました。具体的には、業務の進行状況や目標達成度、業務プロセスについての相談が上司に好まれています。

一方、部下はキャリアやワークライフバランスといった、個人の将来に関わるテーマにより高い関心を持っていることがわかります。このギャップが、部下が本音を語らない原因の一つです。特にワークライフバランスに関する話題は、部下では5位にランクインしているのに対し、上司では10位にとどまっていることから、業務の進行優先が強調され、部下の意向が軽視されやすい環境が示唆されています。

解決策と企業に求められる姿勢

この調査から、1on1 MTGは制度として重要である一方で、実際には部下が率直に話せる場として機能していない現状が浮かび上がりました。企業は、評価面談と1on1 MTGを明確に切り分け、守秘の内容を明文化することが必要です。また、ワークライフバランスやキャリアについても議題に取り入れ、定常的なアジェンダ化が求められます。

新たに設計された質の高い1on1 MTGの実現により、部下が本音を語りやすくなる環境が整うことで、組織全体の信頼関係を築くことが期待されます。今後の企業には、量より質に重きを置いたコミュニケーション文化の確立が求められるのです。