宇宙開発の新たな一歩、CIGS太陽電池の搭載
出光興産株式会社が開発した宇宙用CIGS太陽電池セルが、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が進める新型宇宙ステーション補給機「HTV-X1」に搭載され、次世代の太陽電池技術の実証が行われることが発表されました。これは、宇宙でのエネルギー供給を担う重要な一歩となります。
宇宙用CIGS太陽電池とは
CIGSとは銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)の化合物から構成された半導体材料です。この材料を用いた太陽電池セルは、特に高い放射線耐性と軽量性を特徴とし、過酷な宇宙環境でも安定して運用できる可能性を秘めています。HTV-X1が打ち上げる「SDX(Space solar cell Demonstration system on HTV-X)」では、この太陽電池の性能を、高度300~400kmの宇宙空間で約2か月にわたりモニタリングする予定です。
HTV-X1のミッション
JAXAのHTV-X1は、独自の技術を駆使して開発された無人補給船で、国際宇宙ステーション(ISS)への物資搬入を行うだけでなく、打ち上げ後も宇宙軌道上で様々な技術検証ミッションを実施する予定です。この中で、CIGS太陽電池はSDXを通じてその性能が確認されます。
特に注目されるのは、この太陽電池が自己修復機能を持っている点です。宇宙空間では放射線や極端な温度変化があるため、一般的なシリコン(Si)太陽電池やガリウムヒ素(GaAs)太陽電池は出力が低下することがありますが、CIGS太陽電池は放射線の影響を受けにくく、出力を長期間維持できるのです。
未来の宇宙開発に向けて
出光興産は1970年代から新規ビジネスの開拓を目指しており、その中でもCIGS太陽電池の研究開発は30年以上の歴史を持ちます。2022年からは次世代研究所を設立し、宇宙用途に向けた新たな挑戦を進めています。独自の薄膜技術により、高い放射線耐性と軽量化を実現し、宇宙環境でも優れた性能を発揮することが期待されています。
CIGS太陽電池は、衛星の安定稼働を実現し、長寿命化も図ることができます。これにより、持続可能な宇宙開発の実現に向けた大きな一歩を踏み出すことができます。
結論
出光興産が開発した宇宙用CIGS太陽電池がHTV-X1に搭載されることは、宇宙開発分野における新たな可能性を切り開くものです。今後の検証結果により、宇宙用CIGS太陽電池の市場参入が加速し、持続可能な宇宙開発に貢献することが期待されます。最新技術を駆使したこの取り組みが、未来の宇宙インフラに重要な役割を果たすことを願います。