1人の操縦者による5機体同時ドローン運航、全国4地点で成功
2024年10月、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)、KDDI株式会社、日本航空株式会社(JAL)の3社は、画期的なドローン運航実験に成功しました。1人の操縦者が、全国4か所に配置された5機のドローンを同時に遠隔操作するという、かつてない挑戦です。この実験は、NEDOの「次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト(ReAMoプロジェクト)」の一環として行われました。
実験内容と成果
この実験では、KDDIが開発した最新の運航管理システムが活躍しました。このシステムは、複数のドローンを同時に管理し、操縦を支援する高度な機能を備えています。JALは、航空安全に関する豊富な知識と技術を生かし、リスク評価と安全な運用手順の策定を行いました。
特に、システムにはヒューマンエラーを防ぐための工夫が凝らされています。例えば、異常事態が発生した場合、操縦者に音声と画面表示で警告し、適切な対処法をアドバイスする機能が搭載されています。このシステムと運用手順のおかげで、操縦者は気象条件などが異なる4か所の地点で、5機のドローンを安全かつ効率的に運航することに成功しました。
実験では、想定外のトラブル(機体やシステムの不具合、急激な天候の変化など)をシミュレーションしたケースも実施されました。これらのトラブルへの対応状況をデータとして収集することで、システムのさらなる改良につなげることが期待されます。
背景:社会課題の解決に向けたドローン技術の活用
近年、物流の逼迫、労働力不足、社会インフラの老朽化など、日本社会は多くの課題に直面しています。ドローン技術は、これらの課題解決に貢献する大きな可能性を秘めています。しかし、ドローンの社会実装を進めるためには、多数機同時運航といった高度な技術と、安全性を確保するための信頼できるシステムが必要です。
NEDOは、2022年度からこの課題に取り組む研究開発プロジェクトを実施。1対多のドローン運航システムの要件定義、運航管理システムの開発、そして飛行実験などを段階的に行ってきました。今回の実証実験は、そのプロジェクトにおける重要な成果です。
今後の展望:ドローンの社会実装への貢献
今回の成功は、ドローンによる物流システムの高度化に大きな弾みをつけるものです。 今後は、ドローンの自動化・自律化技術の進歩に伴い、操縦者の役割や運航管理体制も変化していくと考えられます。NEDO、KDDI、JALは、この実証実験で得られた知見を活かし、多数機同時運航に関する制度設計にも貢献していくとしています。ドローンの社会実装に向けた取り組みは、これからも続いていきます。