QunaSysと鴻海研究院が共同研究、量子計算の新たな地平を開く

QunaSysと鴻海研究院の共同研究の成果

株式会社QunaSysと鴻海研究院（Hon Hai Research Institute, HHRI）は、量子計算の進展に向けた重要な共同研究の成果を発表しました。この研究は、国際学術誌『Physical Review Research』にて採択され、量子化学シミュレーションを効率化する新しいフレームワークを提案しています。特に、先進的なフェルミオン符号化技術とニューラルネットワークを用いた補助デコーディングの組み合わせに焦点を当てています。

研究の背景と目的

従来の量子化学シミュレーションは、膨大な量の量子ビットと計算資源を消費するものでした。これに対し、QunaSysはQSCI（Quantum Selected Configuration Interaction）アルゴリズムを開発し、IBMがこの技術をさらに展開しました。それでも、数値的な課題や古典的手法との比較の際には議論が必要でした。この新しい研究は、鴻海研究院の先進的な技術を利用し、更なる効率化を図るものであり、量子計算とAIの統合の可能性を示しています。

Lossy-QSCIのアーキテクチャ

本研究の中核をなすのはLossy-QSCIアーキテクチャです。このアーキテクチャでは、鴻海研究院が開発したRLE（Random Linear Encoder）手法を用いて、VQE（Variational Quantum Eigensolver）に必要なリソースを圧縮します。これによって、従来の量子化学シミュレーションに比べて、少ない量子ビットで高い精度の計算が可能になることが示されました。

産業応用の可能性

この研究の成果は、薬剤開発や新材料の発見においても大いに期待されています。特に、製薬業界では新薬の分子設計スピードを向上させることが期待され、材料科学や再生可能エネルギーの分野でも次世代の技術に繋がるとされています。これにより量子コンピュータの実用化に向けた道筋が開かれ、産業界での利用が現実味を帯びています。