科学者への信頼を測る新たな国際調査
最近、早稲田大学と海外の研究機関が共同で行った調査によって、68か国71,922人の人々の科学者への信頼に関するデータが公表されました。この調査は、2025年1月20日に「Nature Human Behaviour」に掲載され、パンデミック後の科学への信頼感を評価する重要な資料となっています。
調査の概要
この調査は、“TISP研究プロジェクト”によって実施されました。241人の研究者によって構成され、この調査は全世界を対象に行われたもので、特に新型コロナウイルスの影響を受けた社会における科学者への信頼度を把握することを目的としていました。調査では、科学者に対する信頼を1(非常に不信)から5(非常に信頼)までのスケールで評価し、結果は平均3.62ポイントという高い信頼度を示しました。特に、科学者の有能性や誠実さ、人々のウェルビーイングへの関心が高く評価されていました。
日本の信頼度の低さ
一方で、日本は他国と比べて信頼度が低いという結果が示されました。日本の信頼度は平均3.37ポイントで、世界平均を下回っています。これは、科学への信頼が相対的に低い国であることを示しています。このため、社会的に見ても、科学者が政策決定により参与すべきだという意見も限定的であり、特定の政策について主張を控えるべきだとする意見が高いというデータが示されました。
科学者と政策決定の関与
調査の結果、特に興味深いのは多くの参加者が科学者の政策決定における参与を支持している点です。対象者の52%が、科学者が政策決定にもっと関与すべきだと考えており、対して23%が科学者が政策についてアクティブに主張する必要はないと答えています。これは、科学者が社会において信頼され、重要な役割を果たすべきであるとの合意があることを示しています。
科学に対する信頼の重要性
調査によれば、科学者に対する信頼は、感染症や気候変動などの危機際において重要な要素であることが過去の研究でも示されています。科学者に対する信頼が高い国では、効果的なワクチン接種などの公衆衛生対策が成功した事例もあります。したがって、信頼の維持や増加が今後の社会における科学者の役割にとって重要です。
研究成果の社会的影響
本研究は、科学者に対する人々の視点を明らかにし、今後の科学コミュニケーションや政策に対するアプローチに影響を与えることを期待しています。そして、科学者たち自身がこの結果を受け入れ、一般市民との対話を進め、科学に対する信頼を高めるための手段を模索することが求められます。さらに、日本におけるデータ分析が今後の研究においても続けられることが、社会全体の科学への信頼を深める手助けとなるかもしれません。
今後の展望
調査には一部懸念も浮かび上がりました。たとえば、回答者の42%が「科学者は他者の意見を尊重している」と考えているに対し、半数に満たない現状が示されています。また、国防や軍事研究の優先度が低く見積もられているという意見も何かしらの課題を示唆しています。今後は、科学者たちがそれらの懸念に誠実に応える必要があります。