難治性結核プレXDR-TBの新治療法、臨床試験で良好な結果
結核の中でも特に治療が困難なプレXDR-TB(プレ広範囲薬剤耐性結核)に対する画期的な新治療法が、endTBコンソーシアム(※)による臨床試験(endTB-Q試験)で良好な暫定結果を示しました。この試験は、従来の治療法よりも短い期間で、べダキリン、クロファジミン、デラマニド、リネゾリドという4種類の薬剤(BCDL)を組み合わせた治療戦略を採用しています。
※endTBコンソーシアム:国境なき医師団(MSF)、パートナーズ・イン・ヘルス(PIH)、インタラクティブ・リサーチ・アンド・ディベロプメント(IRD)が主導し、国際医薬品購入ファシリティ(ユニットエイド=Unitaid)が資金援助するコンソーシアム
長期治療からの転換
プレXDR-TBは、リファンピシンやフルオロキノロン系抗菌薬などに耐性を持つため、従来の治療法は2年にも及ぶ長期治療で、副作用も強く、治癒率も5割以下でした。しかし、endTB-Q試験では、治療期間を6カ月または9カ月に短縮できる可能性を示し、大きな転換をもたらす成果が得られました。
試験にはインド、カザフスタン、レソト、パキスタン、ペルー、ベトナムの6カ国から323人が参加。多様な患者を対象とした結果である点が信頼性を高めています。
試験結果のポイント
試験の結果、BCDLを6~9カ月投与する治療法は、従来の長期治療(治癒率89%)と比較してやや低いものの、87%という高い治癒率を示しました。特に、治療開始時に重症の結核病変がない患者では、6カ月治療で効果が不十分な場合は9カ月に延長する戦略が、93%という非常に高い治癒率を達成しました。ただし、重症患者においては、9カ月治療でも従来の長期治療と同等の再発予防効果は確認できませんでした。
重症度に応じた治療戦略の重要性
この試験は、患者の重症度や治療への反応に応じて治療期間を調整する戦略の有効性を示唆しています。非重症患者にはBCDLの6~9カ月治療が適している一方、重症患者には従来の長期治療の方が適切である可能性が示されました。
今後の展望
この成果は、世界保健機関(WHO)が今年8月に多剤耐性結核(MDR-TB)に対する新しい短期レジメンを推奨するなど、結核治療における最近の進歩に続く大きな一歩です。今後は、強化されたレジメンを必要とする患者の特定を改善し、プレXDR-TB治療の最適化に向けて研究が続けられます。
関連団体
この試験は、ユニットエイド(Unitaid)、国境なき医師団(MSF)、パートナーズ・イン・ヘルス(PIH)などによって共同出資されました。これらの団体は、薬剤耐性結核の治療改善に長年取り組んでおり、今回の成果は、その努力の結晶と言えるでしょう。