新たな肺がん検査技術の芽生え
日立および日立ハイテクと国立がん研究センター中央病院が共同で開発した新しい肺がん検査技術。この技術は、特に肺がんが疑われる患者のために進化しており、画像診断だけでは判断が難しい肺末梢病変を対象としています。気管支鏡検査における迅速細胞診(ROSE)への応用を意識したこの技術は、走査電子顕微鏡(SEM)とエネルギー分散型X線分光法(EDX)の組み合わせを用いています。
背景と必要性
肺がんは日本を含む多くの国で重要な健康問題として挙げられています。早期発見が患者の生存率を大幅に向上させることが知られており、低線量CT検診が普及する中で、特に小型の病変に対する病理診断のニーズは高まっています。従来のROSEでは医療従事者が光学顕微鏡を使用して検査を行いますが、観察に基づく判断には限界があります。
新技術の特長
この新たな技術では、まずSEM-EDX法を用いて細胞核ごとにDNA構成元素であるリンに基づく特性X線カウント、「Pカウント」を計測します。さらに、SEM画像から観察した細胞核の面積も把握します。この二つの定量指標を組み合わせることで、より客観的な細胞評価が可能となりました。「Pカウント・核面積プロファイル」として知られるこの手法は、がん細胞群が正常細胞群と異なる分布を示すことを証明しています。
49件の気管支擦過細胞検体を用いての解析結果において、がん細胞群と正常細胞群の間に有意な差が見られ、これは検体評価や追加採取の判断支援に寄与することが期待されています。
導入の容易さ
この技術は、消費電力が少ない卓上型の低真空SEM(LVSEM)を使用しているため、検査室の限られたスペースでも容易に導入できる点が特長です。スライドガラス標本をそのまま観察できるため、従来の検査プロセスに優れた適応性を持っています。
今後の展望
日立と日立ハイテクは、今後も技術の改良を進め、気管支鏡検査におけるROSEへのさらなる応用を目指しています。また、この成果は2026年3月26日付の「Scientific Reports」にも発表されており、広く医療現場への実装が期待されます。
この新技術により、より正確で迅速な肺がん検査が実現することが期待されており、今後の進展に注目が集まっています。