2025年大阪・関西万博における気象予測の進化
2025年4月から開催される大阪・関西万博に向けて、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks(PFN)、理化学研究所、エムティーアイの6機関が相互に協力し、高精度な気象予測情報を提供するプロジェクトが始まります。この取り組みは、来場者や周辺地域住民の安全確保を目的としており、豪雨の早期発見とその予測精度の向上を図ります。
高精度気象予測の要素技術
このプロジェクトにおいては、次世代気象レーダ「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(MP-PAWR)」とスーパーコンピュータ「富岳」が重要な役割を果たします。MP-PAWRは、短時間での豪雨を早期に検知できる能力を提供し、豪雨の規模や位置を正確に予測するために開発されています。このレーダは、30秒ごとの三次元観測が可能で、局地的な豪雨の発生を迅速に捉えることができます。
一方、富岳は過去に類を見ない計算能力を持ち、このプロジェクトでも豪雨のリアルタイム予測に使用されます。特に万博開催期間中は、約1ヶ月間のみその性能を最大限に活用し、最新の気象モデルを利用して豪雨の予測を行います。
近年の気象状況を考慮して
最近の研究によると、短時間集中の豪雨の発生頻度が増加しており、その影響をモニタリングすることはますます重要になっています。特に、激しい雨は被害を誘発しやすいため、MP-PAWRによる高精度なデータ解析を通じて、住民への安全情報をホットな状態で提供する必要があります。強い雨では、既存の気象レーダが直面する「降雨減衰」という障壁が存在しましたが、最近の技術革新により、MP-PAWRが集めたデータを効率よく圧縮・配信できるプラットフォーム「きゅむろん」が開発されました。これにより、気象データの迅速な配信が可能になり、生活者への危険予測が強化されます。
万博での実証プロジェクトの詳細
万博においては、神戸市と吹田市に設置されたMP-PAWRを利用して、イベント期間中、関西地域の積乱雲の同時観測が行われます。観測データは高精度な三次元雨量推定技術を適用し、PFNのデータ圧縮プラットフォームを通じて配信されます。これに基づき、エムティーアイが運営するアプリ「3D雨雲ウォッチ」にて、豪雨の3D表示や、AIによるリアルタイム豪雨予測が提供されます。
このアプリを用いると、特定のエリアでの豪雨の可能性をチャット通知として受け取ることができ、利用者は通常、最大30分前から雨の危険を知ることができます。また、「NICT AIナウキャスト」を用いた通知もあり、こちらはさらに短い時間間隔での豪雨情報を提供します。
各機関の役割分担
6つの機関は、それぞれ特定の役割を持っており、NICTはMP-PAWRの運用とAI予測情報を提供します。大阪大学も同様に、MP-PAWRの運用を行い、防災科研はデータ解析技術を提供、PFNはデータの転送を担当します。また、理研はスーパーコンピュータによる気象予測を実施し、エムティーアイは情報をアプリ上で表示・配信します。これらの連携により、高精度の気象情報提供体制が整っていくことになるでしょう。
このプロジェクトは、気象予測技術の進化とそれが人々の豊かな生活に貢献することを期待させます。大阪・関西万博でのこの革新的な取り組みが、来場者の安全確保とより素晴らしい体験の実現につながることを願っています。