次世代営農型太陽光発電システムが新エネ大賞受賞
2023年6月、出光興産株式会社が開発を進めている「次世代営農型太陽光発電システム」が、令和6年度の新エネルギー大賞にて新エネルギー財団会長賞を受賞しました。この受賞は、農業と再生可能エネルギーの共生を実現する先進的なモデルとして評価されたことに由来します。
システムの概要と実証事業
このシステムは、出光興産と株式会社クリーンエナジージャパンの共同開発の成果であり、特に太陽光を自動追尾する可動式架台(トラッカー)と、両面受光型の太陽光パネル(両面モジュール)を組み合わせたところに特徴があります。これにより、農地における太陽光発電の効率を高めつつ、農作物への日照を確保することを目指しています。
実証試験は2023年6月から千葉県木更津市の水田にて行われ、初号機となる規模(45kW)で稼働しています。このプロジェクトでは、農業面においても収穫した米の品質と収量を確認しており、トラッカーによる太陽光パネルの制御技術も実証されました。さらに、将来的には2025年度に2MW規模の大規模プラントも計画されています。
農業との課題と解決策
農地における太陽光発電の実用化には、従来のシステムでは農作物への日照不足が大きな課題となっていました。本システムでは、耕作期間と休耕期間を明確に分けており、耕作期間には作物への日射量を最大化。休耕時には太陽光パネルが最大限に日光を浴びるよう設計されています。また、高さ3.8mのトラッカーが、トラクターなどの農機具の運搬を可能にしているため、農作業にも支障を来さないよう工夫されています。
政策の背景
2024年12月には日本政府が第7次エネルギー基本計画を発表。2040年度には再生可能エネルギーの比率を4~5割にする目標が示されていますが、大規模な発電所設置の制約がある中、農地を利用した太陽光発電の重要性が増しています。このような新たな収益源の確保は、農家にとっても大きな意義があります。
出光興産は、次世代営農型太陽光発電を通じてカーボンニュートラル社会の実現を目指し、地域のエネルギー自給率向上にも取り組む方針です。今回の受賞は、その取り組みの一環として大きな前進を示すものとなります。
この農業とエネルギーの両立を目的とした革新的な取り組みは、今後の持続可能な社会の構築に向けて期待が大きいと言えるでしょう。