妊娠と流産の現実に寄り添う絵本
妊娠は、女性にとって人生の中でも特別な出来事であり、喜びに満ちた瞬間です。しかし、その裏には流産や死産という厳しい現実が潜んでいます。長崎で誕生した絵本『ちいさな天使のものがたり』は、流産を経験した母親や家族の心情に寄り添おうとする作品です。
絵本の世界
この絵本の主人公は「ちいさな天使」。これは、生まれずに逝った赤ちゃんを表現しており、天使は雲の上から「お母さん」になる女性を探し始めます。約束の時間にお母さんの元に降り立ち、幸せなひとときを過ごしますが、やがてその時が来て空へ帰ってしまうのです。このストーリーは、妊娠した女性にとっての非常に重いテーマを取り扱っていますが、同時に愛と希望を伝えています。
流産の現実
実際、妊娠することで流産を体験する可能性は多くの女性に訪れます。医療統計によると、全妊婦の15%が流産を経験しており、妊娠22週以降でも死産率が約2.39%に達することが示されています。この現実は多くの女性にとって非常に厳しいものです。流産や死産を経験した女性たちは、自身の体験を話したくても、周囲の無理解や心ない言葉を気にし、孤独に苦しむことが多いです。
天使ママたちの存在
このようなですが、その悲しみを語る声として「天使ママ」というアカウントがTwitter上で多く存在しています。彼女たちは流産や死産を経験した赤ちゃんを「天使」として愛し続け、つぶやきの中で注意深くその思いを表現しています。助け合い、癒しを見つける場所であり、仲間たちとのつながりを通じて少しでも心の平和を見出そうとしています。
絵本の著者と制作の思い
『ちいさな天使のものがたり』の著者であるかわかみせいじさんは、流産を経験した友人から感じた痛みをもとに、この絵本を作り始めたといいます。彼はカウンセラーとして活動していましたが、言葉だけでなく物語で感情を伝えたいと思い、特別な思いを込めて絵本が完成しました。初版から4ページ増やす改訂作業を行い、物語がより深く読者に響くように心がけています。
彼は「失った悲しみを受け入れ、泣くことも大切ですが、喜びや愛情をもって生きていけることを思い出してほしい」と語ります。同時に、このテーマは誰もが直面する可能性のあるものであり、議論を促すこと自体に意味があると信じています。
希望の伝え手
『ちいさな天使のものがたり』は、悲しみを抱える女性たちにとって癒しの道しるべとなるでしょう。赤ちゃんの誕生の裏には多くの感情があり、この絵本はそのすべての想いに寄り添います。涙を流している女性たちや、その家族にとって、少しでも希望の光を届けられる作品となることを願っています。
書籍情報
- - 書名:ちいさな天使のものがたり
- - 著者:かわかみせいじ(作)、としくらえみ(絵)、満行勝(監修)
- - 判型:A5判
- - ページ数:32ページ
- - 発行日:2017年7月1日
- - 本体価格:1200円
- - ISBN:9784491033624
- - 発行元:株式会社東洋館出版社
- - 公式サイト:東洋館出版社
- - Twitter: @angel_toyokan