IHIが米国NuScale社の小型モジュール原子炉プロジェクト用モックアップを完成
日本のIHIが、アメリカのNuScale Power社の小型モジュール型原子炉(SMR)プロジェクトの一環として、鋼製モックアップを横浜工場でついに完成させました。このモックアップは、ルーマニアのRoPowerが、旧石炭火力発電所の跡地に建設するSMRプロジェクトに寄与する重要な構成要素として位置づけられています。
プロジェクトの背景と目的
本プロジェクトは、ルーマニアの国営原子力発電会社Nuclearelectricaと民間エネルギー会社Nova Power & Gas S.R.Lが共同で設立したRoPowerが推進しています。具体的には、ドイチェスティ(Doicesti)にある旧発電所跡地にSMRを建設するためのプロジェクトで、IHIは韓国のSamsung C&Tからプラント建設業務を受注し、モックアップ製作を担当しました。
特に、このモックアップは長さ約9m、幅1.2m、高さ6m、重さ46トンというサイズで、実際の原子炉建屋の壁として使用されることになります。IHIは2021年からNuScale社に出資し、SMR技術開発に取り組んでおり、今回の成果はその努力の結実と言えるでしょう。
技術力を活かした意味
IHIは、その豊富な原子炉関連機器の製造経験を活かし、SMR事業の実現に向けて力を注いでいます。鋼製のモックアップ製造は、NuScaleプロジェクトの実現に向けた重要なマイルストーンとなるとともに、ルーマニアでの原子力サプライチェーンの構築に寄与していく意向が示されています。
同社は、原子炉に必要不可欠な機器を製造する世界有数の企業として知られ、再処理や廃炉といったバックエンド分野においても高い設計・製造能力を保持しています。将来的には、国内外での技術力の維持・強化を目指すとともに、2030年代には売上1,000億円を見込んでいます。
SMR技術の展望
小型モジュール原子炉(SMR)は、従来の大型原子炉に比べてさまざまな利点を持ちます。コンパクトで安全性が高く、費用対効果も優れているため、世界中での採用が進むと期待されています。IHIが進めるこの技術開発は、特に環境への配慮やエネルギーの安定供給に寄与するプロジェクトとして、今後の展望が大いに期待されます。
まとめ
横浜でのモックアップ完成は、IHIのSMRプロジェクトにおける技術革新の一端を示しており、今後の国際的な展開に寄与することでしょう。ルーマニアでの建設が進む中、原子力の未来と持続可能なエネルギー供給の方向性を示す事例となると思われます。