新たなカーボンリサイクルコンクリートの登場
環境への配慮が叫ばれる中、早稲田大学の研究グループが開発した新しいコンクリートが注目を集めています。このコンクリートは、海水中のマグネシウムを用いて二酸化炭素(CO2)を固定化し、カーボンリサイクル材料「WMaCS(ダブルマックス)®」として知られるものです。この革新的な技術は、従来のコンクリートとはまったく異なる特性を持っており、環境負荷の軽減に貢献することが期待されています。
WMaCSの魅力
WMaCSは、海水からのマグネシウムを利用してCO2を炭酸塩に変換するプロセスを経ています。このプロセスにより、1立方メートルあたり約20〜110kgのCO2を固定化することが可能です。従来のポルトランドセメントを使ったコンクリートとは異なり、WMaCSを用いたコンクリートは石灰から生成されるクリンカを一切含まないため、硬化メカニズムも独自のものとなっています。
さらに、WMaCSを使用することで、施工性や圧縮強度は従来のコンクリートと同等であり、約1-2時間の凝結時間を持つため、実用に耐えうる性能を発揮します。これは、コンクリートの生産過程で発生する非エネルギー由来のCO2を大幅に削減することにつながります。
研究の背景と今後の展開
このプロジェクトは、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)から受託された研究の一環として進められています。海水を利用したカーボンリサイクル技術は、2050年のカーボンニュートラル社会を実現するための重要な技術として位置づけられています。
39004年には、広島県・大崎上島において、海水を使用したカーボンリサイクル技術のパイロットスケール試験が開始され、再生可能なエネルギーを使用した実証研究が進められる予定です。これにより、海水由来のCO2を用いた、さらなるコンクリートの製造が目指されます。
現在、消波ブロックやインターロッキングブロックなど、プレキャストコンクリート製品への応用を視野に入れた開発が進行中です。さらに、モルタルやボード材など多様な製品の開発も行われ、商用化へ向けての準備が着々と進んでいます。
おわりに
環境問題が深刻化する中で、WMaCSによる新しいコンクリートの開発は、持続可能な社会の実現に向けた一歩となることでしょう。これにより、建設業界における環境負荷の軽減や新しいビジネスモデルの構築が期待されます。今後、この技術がどのように社会実装されていくのか、その動向に注目が集まります。