三菱電機が達成した宇宙光通信の新たなマイルストーン
三菱電機株式会社は、宇宙光通信向けに開発したレーザー光源モジュールの軌道上での実証試験において、全サクセスクライテリアを達成したと発表しました。この成果は、彼らが民生部品を使用して開発したもので、環境における性能劣化を6ヶ月間の宇宙空間で確認するという、世界でも前例のない試みです。
宇宙光通信の重要性
近年、人工衛星による画像の収集は災害時の状況把握や森林保護など多様な用途で活用されていますが、従来の衛星通信では電波に限界がありました。衛星画像の地上への送信や異なる衛星間の通信には、通信速度や容量、距離に関する難題が存在しました。そこで注目されるのが、宇宙光通信技術です。この技術は電波の代わりにレーザー光を使用し、10倍以上のデータ容量と速度を可能にします。
レーザー光は電波よりも波長が短いため、受信機の小型化も実現可能です。これにより、災害地域や過疎地でも通信インフラを維持できます。
成果の概要
適応性の高い光源モジュールの開発には、地上の光ファイバー通信で使用されている1.5μm帯レーザーが利用されました。2022年に光受信器が完成し、その技術を基に、6ヶ月間にわたる宇宙空間での実証試験を行いました。
実証には、超小型人工衛星「OPTIMAL-1」が使用され、レーザー光の周波数制御が確認されました。結果として、宇宙環境下での性能評価において全ての基準をクリアし、地上での評価と同等の性能を維持していることが明らかになりました。この成果は、設定されたサクセスクライテリアの達成の証です。
産学連携ならではの利点
今回のプロジェクトでは、福井大学やアークエッジ・スペースといった組織との産学連携が強調されており、超小型人工衛星の使用により開発コストが大幅に削減されました。計画から実証までの時間も従来の約3分の1に短縮されたため、迅速な技術実証が可能となったのです。
今後の展望
三菱電機は、宇宙光通信向けの技術開発をさらに推進し、官需や商業へ提案していく予定です。また、超小型人工衛星を用いて光部品の適応性を評価し、今後の宇宙産業の発展に寄与することを目指しています。これによって、宇宙光通信は社会実装へと進む段階にあるといえるでしょう。
関係者の意見
プロジェクトに関与した関係者は、それぞれの見解を述べています。アークエッジ・スペースの福代CEOは、今回の実証が高速かつ大容量通信の実現に向けた一歩であるとコメントしています。一方、福井大学の青柳准教授は、高性能な民生部品を用いた技術の重要性を強調しました。これらの意見からも、今回の結果が持つ意義の大きさが伺えます。
この成功により、今後の宇宙産業は新たな革命を迎えることが期待されます。