最近、商船三井株式会社(社長:橋本剛)は、シンガポールの非営利団体であるGlobal Centre for Maritime Decarbonisation(以下GCMD)とYara Clean Ammonia(YCA)との共同で、オーストラリア沖においてアンモニアの船から船への移送を行う実験を成功裏に終えました。この実験は9月13日から14日にかけて行われ、脱炭素化に寄与する新たな燃料供給手段の可能性を示唆するものです。
アンモニアは燃焼時に二酸化炭素を排出しないため、環境に優しいクリーンエネルギーとしての期待が高まっており、船舶燃料としての利用が進められています。しかし、陸上施設から海上における協力が整備されていない現在、STS(Ship-To-Ship)方式による燃料供給は、実用化に向けた重要なステップとされています。この実証実験は、将来的にアンモニアを燃料とするための実用的な方法の一環として位置づけられています。
今回の実験は、オーストラリアのピルバラ地域、特にダンピア港沖で行われました。そこでは、商船三井のLPGおよびアンモニア輸送船であるGreen Pioneerが、Navigator Gas社のNavigator Globalという船との間で、4,000立方メートルのアンモニアを2回にわたり移送しました。
アンモニアを用いたSTS実績は、これまでの重油やLNGに関する実績に比べて少なく、リスクやオペレーションに関する新たな課題があるため細心の注意が必要でした。この実験に先立って、関係者間での詳細な協議が行われ、トライアルの安全性が確保されました。YCAはアンモニア供給を担当し、GCMDのもと商船三井の乗組員がトライアル期間中に技術指導を行うなど、関係者が一体となって成功へと導きました。
GCMDのCEOであるLynn Loo教授は、実験の成功が海運業界の脱炭素化を進める重要な一歩であると述べ、すべてのパートナーに感謝の意を表明しました。また、YCAのMurali Srinivasan副社長は、国際海運が温室効果ガスの排出に寄与していることを踏まえ、クリーンなアンモニアの重要性を強調しました。商船三井の田村城太郎専務も、この実験が今後の代替燃料へのスムーズな移行に寄与する重要な試みであると述べました。
商船三井グループでは、環境戦略を経営計画の重要な柱としており、2050年までにネットゼロ・エミッションを目指しています。今後もアンモニアを用いた安全かつ高品質な輸送を続け、脱炭素社会の実現に努めていく方針です。このような活動は、商船三井が未来のクリーンエネルギー供給を確立するための重要な役割を果たしていることを示しています。