宇宙での生活を支える折り紙ミラーの新たな挑戦
国際宇宙ステーション(ISS)に新たな仲間が加わった。それは、株式会社SPACE BEAUTY LABが開発した「origami-mirror」、すなわち折り紙ミラーだ。この多機能鏡は、宇宙飛行士が安心して自らのケアを行えるように設計されており、特に大西卓哉宇宙飛行士と油井亀美也宇宙飛行士のミッションに採用されたことで、大きな注目を集めている。
折り紙ミラーの特長と仕様
折り紙ミラーは、折り曲げることで3面鏡としても、まっすぐに展開することで姿見としても使える特長を持つ。この製品は宇宙生活専用に設計されており、小型・軽量かつ安全で難燃性の高い素材を使用。宇宙飛行士が自らの容姿や健康状態をしっかりとチェックできるように無駄を削ぎ落としたシンプルなデザインに仕上げられている。
この鏡は4枚構造となっており、マジックテープを使って宇宙船内の任意の場所に固定可能。プライバシーが守られるため、安心して身だしなみを整えることができ、使用が容易な点も魅力だ。特に、後ろ側や背中を確認しづらかった宇宙飛行士にとって、この折り紙ミラーがもたらす利便性は非常に大きな改善となる。
鏡を見る行為の重要性
鏡を使う行為は、ただの衛生や美容にとどまらず、自分自身の存在を確認し、心の安定を保つための重要な役割を担っている。ISSの環境では、鏡の種類が限られており、宇宙飛行士は自身の容姿を整える機会が不足していた。SPACE BEAUTY LABは、この生活の一部が宇宙での人間らしさを保つために不可欠であると捉え、折り紙ミラーの開発に取り組んできた。
背景と開発の経緯
SPACE BEAUTY LABは2019年に設立され、「宇宙美容」という新たな視点から宇宙生活の課題を解決することを目指している。創業者である寺岡慎太郎氏と殿木修司氏は、その美容業界での経験を活かし、宇宙環境でのQOL(生活の質)を向上させる方法を模索してきた。
2021年には、JAXAが実施した募集において、本製品が採択され、厳しい宇宙仕様を満たすために何度も試作が行われた結果、特許も取得している。このような過程を経て、折り紙ミラーは多機能かつコンパクトな構造を実現した。
地上での応用と未来への展望
折り紙ミラーは、ISSでの成果をもとに地上での転用可能性も模索されている。アウトドア活動や極地での利用、さらには災害時の避難所、医療現場など、様々な限られた環境での衛生や美容、メンタルケアに寄与できる可能性がある。
今後、SPACE BEAUTY LABは共同開発や研究を希望する企業、大学、研究者、デザイナーからの連絡を広く受け付けており、さまざまなシーンでの応用を目指している。
折り紙ミラーは、宇宙から地上へとその価値を広げ、私たちの生活のクオリティを向上させる手助けをする新しいツールとして期待が高まっている。宇宙での生活をより豊かにするこのプロジェクトが、今後の進展を楽しみにしている。