心臓音とAIの革新
2025-07-24 14:36:51

心臓の音をAIが解析!新技術で心不全を早期発見する時代へ

心臓の音をAIで解析する新技術



近年、心不全は高齢化と共に増加し、その早期発見が求められています。特に、心不全は心臓が血液を十分に送り出せなくなる状態で、早期の治療が重要です。そこで注目されるのが、AMI株式会社と熊本大学が共同で開発した新しい技術です。この技術は、心臓が発する音と心電図をAI(人工知能)で解析するものです。本技術の結果を受けた研究は、令和7年6月17日に『Circulation Journal』に掲載されました。

技術の概要



AMI社が開発した「心音図検査装置AMI-SSS01シリーズ」は、心音と心電図を同時に測定するポータブルデバイスです。この装置を使用すると、わずか8秒間でBNP(B-type Natriuretic Peptide)値を推定できます。BNPは心不全の診断において重要なバイオマーカーです。

この技術最大の特徴は、非侵襲的かつ迅速であり、患者にとって身体的な負担が少ない点です。心音とECG(心電図)のデータを組み合わせ、AIを用いてBNP濃度を推定する「eBNPモデル」の開発に成功しました。

研究の背景と方法



心不全は特に高齢者に多く見られる病気で、再入院や死亡率が高いという厳しい事実があります。これまでの診断方法には時間がかかり、患者への負担も大きいという課題がありました。今回の研究は、複数の病院で行われ、心音データやECGデータを集める前向き観察研究として進められました。

対象としたのは心臓の超音波検査を受けている患者1,035人。また、深層学習を用いてモデルを訓練し、BNPレベルの予測精度を高めました。特に、モデルは高BNPレベルの患者をどれだけ識別できるかを評価する感度と特異度を測定しました。

研究成果



eBNPモデルは、外部検証データに対しても優れた性能を発揮しました。具体的にはBNPレベルが100 pg/mL以上の患者を87.8%の感度で識別し、高い精度を維持しています。また、背景音の影響についても調査が行われ、通常の臨床環境の音であればモデルの性能にほとんど影響がないことが確認されました。

今後の展望



この新技術の普及は、心不全の早期発見や在宅でのモニタリングの可能性を広げます。特に、通院しにくい高齢者にとって、自宅での簡易測定ができれば、早期治療につなげられる可能性が高まります。また、体格や腎機能、心房細動の影響を考慮しながら、さらなるモデルの精緻化が進むでしょう。

心臓の音をもとに病気を見抜くという革新的なアプローチが、今後の医療に提供する利点は大きく、患者の負担を軽減しながら、迅速かつ正確な診断が期待されます。心不全のリスク評価が行いやすくなれば、多くの患者に恩恵がもたらされるでしょう。これにより、新たな時代の診断方法が実現し、未来の医療に向けた一歩となることが期待されています。


画像1

会社情報

会社名
国立大学法人熊本大学
住所
熊本県熊本市中央区黒髪2-39-1
電話番号
096-344-2111

トピックス(科学)

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。