日本銀行が開催したワークショップ「金融政策の多角的レビュー」第2回の詳細レポート - 過去25年の経済・物価情勢と金融政策を検証
日本銀行が開催したワークショップ「金融政策の多角的レビュー」第2回の詳細レポート - 過去25年の経済・物価情勢と金融政策を検証
2024年5月21日、日本銀行は「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ第2回「過去25年間の経済・物価情勢と金融政策」を日本銀行本店にて開催しました。経済学者や金融・経済分野の専門家らが集まり、活発な議論が行われました。
第1セッション: 過去25年の経済・物価情勢と金融政策の現状
第1セッションでは、1990年代後半以降の日本の経済・物価情勢を振り返るとともに、最近の環境変化について報告されました。特に、近年注目されている「量的・質的金融緩和」が経済・物価にどのような影響を与えたのか、そして、なぜ賃金や物価が上がりにくい状況が続いているのかについて議論が深まりました。
ワークショップでは、1990年代後半以降、雇用維持を優先し賃金が抑制されたことや、厳しい価格競争が続いたことが、賃金・物価の上昇を阻害してきた要因として指摘されました。さらに、こうした状況が社会に定着し、一種の「ノルム」として受け入れられてきた可能性も議論されました。一方で、近年は人手不足が深刻化するなど、この「ノルム」が変化しつつあるとの見方も示されました。
第2セッション: 非伝統的な金融政策の有効性と今後の課題
第2セッションでは、金利が実効下限制約に直面する状況下における非伝統的な金融政策の有効性と、緩やかな物価上昇がもたらす経済的な意味について報告されました。
金利が実効下限制約に直面する中で、非伝統的な金融政策が「期待に働きかける経路」を通じて経済に影響を与えているか、また、緩やかな物価上昇が経済活性化にどのような効果をもたらすのかについて、専門家らは議論を深めました。
特に、インフレ予想の形成メカニズムや、金融政策が期待に与える効果の評価、緩やかな物価上昇のメリットに関する理論的考察が、実際の経済状況にどれほど適合するのかが議論の焦点となりました。
第3セッション: パネルディスカッション - ノルムの変化と金融政策の教訓
第3セッションのパネルディスカッションでは、まず、前述した「ノルム」が形成された背景や、その最近の変化について議論されました。
1990年代後半以降の雇用維持優先や価格競争の激化が「ノルム」形成の背景として指摘され、近年の人手不足などの影響で、この「ノルム」が変化しつつあるとの見方が示されました。しかし同時に、労働市場の構造的な変化は大きくないため、最近の賃金・物価上昇は一時的なものであるとの見方も出されました。
さらに、過去25年間の金融政策から得られる教訓についても、パネリストによる総括が行われました。非伝統的な金融政策運営については、金利の実効下限制約下でも経済にプラスの効果があったとする見方がある一方、期待への働きかけの難しさや、長期にわたる緩和による潜在的な副作用も懸念されています。
まとめ
本ワークショップでは、過去25年間の日本の経済・物価情勢を振り返り、金融政策の有効性や課題について、多角的な視点から議論が行われました。特に、金融緩和の経済・物価への影響や、賃金・物価がなかなか上がらない理由について活発な意見交換が行われました。
今後も日本銀行は、金融政策のレビューを継続的に行い、経済状況の変化を踏まえた適切な政策運営を目指していくとのことです。