中小建設業の人手不足と賃上げの現状
2025年版の調査を通じて、クラフトバンク株式会社が運営するクラフトバンク総研が明らかにした中小建設業の現状は、依然として厳しい実態を浮き彫りにしています。本調査は、2023年以降に全国の中小建設業を対象に行われ、1,659件の有効回答を集めました。
調査概要
この調査では、中小建設業における人手不足や賃金動向、2024年問題への影響などが詳細に分析されました。回答企業の68%が人手不足のために仕事を断ることがあるとし、採用や育成が最も大きな課題として浮上しました。特に小規模企業では、応募がないという声や採用活動が行われていないとの回答も多く、現場での施策不足が目立っています。
人手不足の深刻さ
調査では、解決すべき人手不足の課題には以下のような内容が挙げられました:
- - 人材採用: 33%が「応募がない」とし、22%が「採用活動をしていない」と回答。
- - 人材育成と離職防止: 43%が「何もしていない・不明」と実施していないことが明らかに。
これにより、構造的な人手不足がいかに進行しているかが浮き彫りになりました。
賃上げの実態
賃上げに関する調査では、全体の32%が「賃金が上がった」と回答。興味深いことに、賃金上昇は主に経営者層から先行しており、職人など現場職との間に格差が見られます。
特に、年商1億円未満の企業では、賃金が上がったと回答したのは18%にとどまっており、賃上げが企業規模に強く依存していることがわかります。また、賃上げを行った企業の58%は業績拡大と回答しており、賃上げと業績の関係も注目に値します。
業績の傾向
業績面では、年商規模に応じた拡大傾向が見られるものの、小規模企業は縮小傾向が顕著であり、数字での明確な改善が求められています。発注単価が上がったとする経営者が49%いる一方で、その効果を実感できていない企業も多いことが問題です。
2024年問題への備え
2024年問題、すなわち時間外労働の上限規制への対策が進んでいない実態も見逃せません。調査では、73%の企業が未対応であり、その大半が小規模企業です。法改正が職人の確保につながる可能性がある一方、その実行にはさらなる努力が必要です。
まとめ
中小建設業の人手不足と賃上げの実態は依然として厳しく、特に小規模企業での改善が求められます。デジタル化や新規営業に取り組む企業では業績が伸びている例も見受けられ、そうした企業を支援する体制の構築が今後の重要課題です。今後、経営支援体制の強化やM&Aを含む業績拡大に向けた取り組みが、中小建設業の未来を切り開く鍵になると期待されます。