ドローン技術で進化する原油貯蔵タンクの点検
テラドローン株式会社が、アンゴラ共和国沖での作業を通じて、ドローン技術を利用した新たな検査手法を実現しました。このプロジェクトは、アズール・エナジーが運用する浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備(FPSO)において、原油貯蔵タンクの非破壊検査を行うもので、ドローン専門の子会社Terra Inspectioneeringを介して実施されています。
背景と必要性
原油・ガスの安定的な生産には、定期的な保守点検が欠かせません。しかし、FPSOのような複雑な設備では、限られた人数で検査作業と生産作業を両立させなければなりません。このため、安全で効率的な検査手法が必要とされていました。従来の手法では、高所や閉鎖空間に作業員が入らざるを得ず、労働安全の観点からも多くの課題がありました。また、検査を実施するためには運転を一時的に止める必要があり、生産性の低下も大きな問題となっていました。
テラドローンは、その課題を解決するために「Terra UTドローン」を導入。これにより、従来の作業に比べて8割もの人員削減を実現し、検査作業の効率化と生産性の向上を図ることに成功しました。また、点検期間も約半減し、設備の稼働停止時間を最小限に抑えることができました。
実施内容
このプロジェクトでは、まず高解像度カメラを搭載した「Terra UTドローン」により目視点検が行われました。これにより、タンク内部の欠陥や腐食の有無を詳しく確認します。特に、タンクの表面に亀裂や腐食がないかを念入りに検査しました。続いて、目視点検で確認された問題箇所を中心に、超音波センサーを利用した板厚計測を行いました。この検査では、音波の反射を解析し、鉄製タンク内壁の腐食状態を詳しく調べます。
出発前に清掃を行い、測定面を平滑に整えた後、検査用ジェルを用いて超音波が適正に伝わる状態を確保し、計測を行いました。これにより、広範な内壁状況を把握することが可能となるのです。
今後の展望
近年、地政学的なリスクや物流の制限により、海上輸送はより重要とされています。これに伴い、FPSO市場は拡大しています。テラドローンは、この流れに乗り、2019年から提供している「Terra UTドローン」を駆使し、造船業界での点検事業を広げています。自社技術と信頼性が国内外で評価されており、アズール・エナジーとの連携を2027年夏まで継続することで、安全性の向上、省人化、生産性向上に寄与することが期待されています。
この事業を通じて、テラドローンは持続可能な運用体制の確立を目指し、ドローン技術の活用をさらに広げる計画です。海洋エネルギー分野での知識と経験を蓄積し、グローバルなプラットフォームとして社会課題の解決を目指して進化を続けます。