電子契約普及の裏で残るハンコ文化、その実態とは
日本国内で進むデジタル化の波にも関わらず、印鑑(ハンコ)が未だに多くの企業で広く使われています。弁護士ドットコム株式会社が行った調査によると、最近の1年間で、電子契約を利用している企業の約84.7%が社外向け書類においてハンコを使用した経験があるという結果が出ました。このデータは、業務のデジタル・トランスフォーメーションが進展していない現状を明らかにしています。特に契約書や公的申請書、注文書といった書類で押印が求められるケースが多く、ハンコ文化が根強く残っていることが分かります。
調査結果の概要
今回の調査は、弁護士ドットコム株式会社が提供する契約マネジメントプラットフォーム「クラウドサイン」を利用している209社を対象に行われました。調査期間は2024年6月14日から6月25日まで。回答者の多くが、自社の業務において未だにハンコを使わざるを得ない状況に苦慮している実態が見えてきました。
社外向け書類におけるハンコ使用状況
調査によれば、社外向け書類におけるハンコ使用の理由として、特に「顧客や取引先の意向が影響している」とする意見が65.0%を占めました。これにより、電子契約が進んでいる一方で、実際には顧客との取引や手続き上の制約から、ハンコ文化が存続している様子が浮き彫りになっています。このため、企業はハンコを使用し続けざるを得ない状況に追い込まれているといえるでしょう。
使用頻度の高い書類
ハンコを使う書類の中で最も頻繁に利用されているのは「契約書」で、86.4%がこの書類での押印経験を報告しています。さらに、「公的な申請書類」や「注文書」もそれぞれ43.5%、39.0%の利用率を示しており、社外手続きにおいてハンコがいかに重要な役割を担っているかが分かります。
社内向け書類におけるハンコ使用状況
また、社内向け書類においても、69.9%がハンコを使用した経験があると回答しています。高頻度で使用される書類は「各種申請書類」が61.0%で最も多く、続いて「議事録」や「稟議書」となっています。
ハンコ使用継続の理由
社内では、ハンコ使用をやめるべきだと思う人が69.9%に達しています。それでも、ハンコの使用が継続している理由については、34.9%の人が「昔からの慣習が影響している」と答えています。このように、制度や文化がもたらす影響は企業のデジタル化において明らかに障害となっています。
ハンコ文化をなくすためには
ハンコを使わずに業務を進めるためには、使いやすい電子承認・契約システムの普及が最も重要だと考える人が27.4%おります。また、制度的に押印が必要な書類の電子化が進むことや、全体的なデジタル化の促進が求められています。社員の現場からは、紙文化の代替としてのデジタルツールの必要性が強く訴えられています。
最後に
この調査結果は、デジタル化が進む時代においても、ハンコ文化がいかに日本のビジネスシーンに根強く残っているのかを示しています。今後、企業がさらなるデジタル化を推進するためには、社会全体の意識改革が求められることでしょう。ハンコ文化の見直しや、デジタル社会へのシフトは避けて通れない課題です。