日本企業の海外展開に見る売上規模による二極化と市場進出の多様化
株式会社タナベコンサルティングが実施した「2026年度海外事業に関するアンケート」の結果が発表され、日本企業の海外展開について注目すべきトレンドが見えてきました。本調査では、日本企業の海外進出における現状と今後の見通し、さらには企業規模による意識や課題の違いについて分析しています。
調査結果の概要
調査によると、日本企業の全体的な海外展開率は上昇していますが、その背後には売上高による顕著な格差が存在しています。具体的には、売上高300億円以上の企業では82.1%が海外事業を展開しているのに対し、50億円未満では38.7%という状況です。この43%超の差は、今後ますます顕著になると予測されています。
さらに、進出地域もASEANからアメリカやインドへと多様化してきており、特にアメリカとインドへの進出を検討する企業数が7ポイント以上増加しています。これは、ASEANの一極集中から多様な市場へのシフトを示唆しています。
格差の進展とその要因
調査結果の中で特に注目されるのは、企業規模によって海外事業に対する意識に違いがあることです。海外展開に対するポジティブな意識を持つ企業は約8割に上りましたが、その背景には少子高齢化による国内市場の縮小や円安といったマクロ経済的要因があると考えられます。これにより、経営者は「現状維持のリスク」を強く感じるようになり、海外展開を急ぐ動機となっています。
一方で、売上高50億円未満の企業の約6割は依然として海外展開を行っておらず、その原因としてノウハウや人材、資金の不足が挙げられます。このような構造的障壁が存在し続ける中、格差の二極化が進むことが懸念されます。
海外事業の見通しと機会
海外事業に関する見通しについては、「増収増益」が43.5%と前年よりも増加し、業績回復の兆しが見えています。ただし、「増収減益」が急増し、企業が売上を増加させる一方で収益を確保できない問題も顕在化しています。この現象の要因としては、現地の人件費や物流コストの上昇が影響していると考えられます。
また、自社の海外事業における「機会」としては「サプライチェーン構造の変化」が最多であり、これをチャンスとして捉えている企業が多いことがわかりました。しかし、外部環境をうまく活用できていない企業もいるため、戦略的な思考が求められています。
現地法人の構築とガバナンス
さらに、現地法人を保有する企業の70%以上が自社のガバナンス構造に違和感を抱いており、その最大の課題として「現地の経営・幹部人材の不足」が挙げられています。多くの企業が日本人駐在員に依存する中で、現地の人材育成が急務とされています。経営管理とガバナンスに関する構造改革が求められる状況です。
今後の展望と提言
この調査結果を受けて、企業は海外事業の推進に必要な基盤を強化し、グローバル人材の育成を図るべきです。海外戦略については、売上規模に応じた戦略設計が求められ、特に50億円未満の企業はリスクを抑えつつ市場に参入する必要があります。また、外部環境の変化を自社に引きつけて読み解く力が、今後の競争力に大きく寄与するでしょう。
株式会社タナベコンサルティングは、企業の国際競争力を高めるための様々な支援を行っており、今後もその取り組みを注視していく必要があります。