脂肪肝の新たな解明
2025-06-03 10:29:59

肝脂肪滴中のコレステロールが脂肪肝を悪化させるメカニズムを解明

研究背景と重要性


日々の食生活によって、多くの人が影響を受ける代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)は、成人の約3割が罹患する一般的な疾患です。特に、その一部が肝炎から肝硬変、さらには肝がんへと進行する可能性があるため、早期の発見と対策が求められています。2024年には、初めてMASHに対する治療薬が承認されたものの、その効果は十分ではなく、新たな治療法の開発が急務とされています。

研究の成果


千葉大学を中心とした国際共同研究チームは、マウスを用いて肝臓脂肪滴に蓄積されるコレステロールがMASHの炎症や線維化に関与していることを明らかにしました。研究では、コリン欠乏高脂肪食を与えたマウスが短期間で肝臓脂肪滴内にコレステロールを蓄積し、その結果、炎症マーカーの上昇が観察されました。

特に注目すべきは、コレステロール合成を抑制する酵素であるCoenzyme A合成酵素(Coasy)の作用です。この酵素を抑制することで、コレステロールの蓄積が減少し、MASHの進行を防げる可能性が示されました。さらに、実験ではベンペド酸やスタチンといったコレステロール合成阻害薬の効果も確認されました。

ヒト組織での検証


研究チームは続いて、ヒトの肝生検検体を分析しました。その結果、MASHと肝線維化を持つ症例において、肝臓脂肪滴中のコレステロールが蓄積していることが分かりました。特に、PNPLA3 I148M遺伝子多型を持つ患者ではコレステロール量が増加しており、逆にHSD17B13の遺伝子多型を持つ患者ではコレステロールレベルが低下していました。これにより、遺伝的な要因が個々の病状に影響を与えることが示唆されました。

今後の展望


本研究の成果は、コレステロールの肝脂肪滴への蓄積がMASHの進行に重要であることを証明しました。今後は、この知見をもとに新しい治療法の開発が期待されます。特に、Coasyの抑制方法やコレステロール合成を阻害する薬剤によって、脂肪滴中のコレステロールをターゲットとしたアプローチが求められています。

用語解説


  • - 肝脂肪滴:細胞内に存在する脂質を貯蔵する構造で、肥満や肝疾患などに関与します。
  • - コレステロール:細胞膜やホルモンの成分で、過剰に蓄積されると健康に影響を及ぼします。
  • - コリン欠乏高脂肪食(CDAHFD):肝臓の健康を脅かす食事。コリンの欠如が肝臓に脂肪を蓄積させます。

本研究は、肝脂肪滴を通じた新しい治療戦略の確立へ向けた重要な一歩となるでしょう。


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会社名
国立大学法人千葉大学
住所
千葉県千葉市稲毛区弥生町1-33 
電話番号
043-251-1111

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