近年、岡山県と広島県において日系資本と欧州スタートアップにおける投資の動きが急速に進展しています。特に、日系最大規模の欧州ベンチャーキャピタルであるNordicNinja VCと、スタートアップに関する世界有数のデータベースを運営するDealroomが共同で発表したレポート「Japan - Europe: A Rising Tech Alliance」は、その動向をまとめた重要な資料となっています。
日系資本の影響力
レポートによると、2024年以降の日系資本は欧州全体のベンチャーキャピタル投資の約6%を占め、すでに2024年だけでも35億ユーロのディールに参加しているとされています。このうち70%がディープテックおよびAI関連に集中しており、これは前年に比べて2倍の比率です。日本企業がこれほどまでにディープテックに注目している背景には、自国の産業基盤の強化や競争力の向上があると言えます。
投資の地域別動向
地域別の投資額を見てみると、英国が149億ユーロで最も多く、日本の投資がどのように地域によって異なるかが鮮明に捉えられます。次いでドイツが48億ユーロ、フランスが34億ユーロという結果で、これらの国々が日本企業にとってどれだけ魅力的な市場になっているかが伺えます。
多様化する投資戦略
かつてソフトバンクが中心とする大型ディールが主流でしたが、現在は総合商社や新興のベンチャーキャピタル、さらには事業会社などが積極的に初期段階の投資に関与するようになりました。2024年には、日系資本による資金調達ラウンドが140件と、2022年比で5.9%増加します。
最近の投資事例としては、バッテリーリサイクル企業tozeroへの1,100万ユーロのシード投資や、ゼロエミッション配送を手がけるHIVEDへの3,800万ユーロのシリーズB投資などがあります。これらの投資は日本の低炭素経済への移行や産業競争力の強化といった戦略的優先課題に貢献しています。
単なる投資ではない協業の進化
日本企業は、単に資金を提供するだけでなく、欧州スタートアップへの買収やパートナーシップを含む、より戦略的な協業を進めています。2023年には、欧州における日本企業によるスタートアップの買収件数が15件に達し、2024年もそのトレンドが続く見込みです。
特に、モビリティ分野やロボティクス、創薬における協業が進展しており、これにより欧州のイノベーションをグローバルに展開する活動が加速しています。
まとめ
これらの投資動向や事業開発の進展は、日本と欧州のテクノロジー企業が互いに持つ強みを活かし、国際的な協力体制を築く新たなステップへの道を切り開いています。NordicNinjaのマネージングパートナー、宗原智策氏は、これからの日本とヨーロッパにおける産業尺度の変革を期待しているとコメントしています。彼の意見によると、日系企業と欧州スタートアップの協力により、国境を越えたイノベーションが生まれ、グローバルな成長が可能になるとのことです。サプライチェーンの安定性の確保や産業革新に向けた大きな流れは、これからの時代に必要な要素となるでしょう。