世界初の大口径ダイヤモンド基板の誕生
2025年3月、Orbray株式会社は、20mm×20mmという世界最大のサイズを持つ(111)単結晶ダイヤモンド自立基板の生産技術を開発したと発表しました。この技術革新により、ダイヤモンドを用いた量子デバイスやパワーデバイスの更なる発展が期待されます。今後、同社は2026年中の製品化を目指し、n型ダイヤモンド自立基板の開発にも取り組むということです。
ダイヤモンド半導体はその優れた特性から、多岐にわたる応用に向けたデバイス開発が進んでおり、特に近年ではダイヤモンド基板の大型化や高品質化に向けた研究が活発化しています。特に、量子デバイスにおいては高品質な(111)ダイヤモンド基板が必須とされ、これにより実用化が加速するでしょう。
量子デバイスの可能性
ダイヤモンド中に存在するNV中心(窒素-空孔中心)は、量子情報技術において非常に重要な役割を果たします。これを利用した量子デバイスは、量子コンピュータや高感度センサに適用されるなど、様々な分野で革命をもたらす可能性があります。これを実現するためには、質の高い(111)ダイヤモンド基板が必要不可欠です。
しかし、従来のダイヤモンド結晶はそのサイズが小さく、また結晶内に双晶と呼ばれる欠陥が生じやすいため、大口径の単結晶ダイヤモンド基板の実現が課題でした。Orbray社はその新たな戦略として、独自の成長技術を用いることでこの問題を克服しました。特に、(111)面のダイヤモンドは、高性能n型ダイヤモンドの実現に向けた鍵となる存在です。
新たな生産技術の開発
Orbray社は、2021年にも高品質な(100)ダイヤモンド自立基板(KENZAN Diamond™)の開発を発表しています。この技術を基にして、(111)単結晶ダイヤモンド基板の製造が進められました。そして、この度双晶のない結晶成長に成功し、20mm角サイズの(111)単結晶ダイヤモンド基板の生産技術が確立されました。
展望と未来
同社は、2026年内にこの(111)ダイヤモンド自立基板の製品化を目指しており、この技術がダイヤモンド半導体デバイスの開発を加速することに期待しています。また、発表された研究成果は、応用物理学会や国際会議でも共有され、さらなる技術革新が広がることが予想されます。
Orbray株式会社は、宝石加工技術を基盤に持つ企業で、その技術を活用して最先端のデバイスを生み出し続けています。今後、同社の取り組みがどのように進展し、産業に影響を与えるか注目が集まっています。
企業情報
- - 企業名: Orbray株式会社
- - 設立: 1953年8月28日
- - 本社所在地: 東京都足立区新田3丁目8番22号
- - 資本金: 1億円
- - 従業員数: 1000名(2025年1月1日現在)
Orbrayは、電気メーターのアクセサリーからスタートし、現在では幅広い製品ラインを展開。これからも先端技術の融合を目指し、より良い社会の実現に貢献し続ける企業です。