ナトリウムイオン電池の性能向上を実現した新手法とその成果
ナトリウムイオン電池の性能向上を実現した新手法とその成果
近年、ナトリウムイオン電池が注目されています。その理由は、リチウムイオン電池に比べて資源が豊富でコストが低いからですが、これまでのナトリウムイオン電池は、その充電速度や低温性能に課題がありました。東京理科大学の研究グループが、新たに開発した希薄電極法により、ナトリウムイオン電池の電極反応速度を定量化し、その優れた性能を実証しました。
研究のポイント
この研究の主な成果は、ナトリウムの挿入反応がリチウムよりも速く、しかも低温でも高性能を維持できることを示しています。具体的には、ナトリウムイオンの活性化エネルギーは約55 kJ/molで、リチウムの約65 kJ/molよりも低く、これがナトリウムの優れた性能を支えているのです。
電極の評価方法
研究チームは希薄化したハードカーボン電極を用い、ナトリウムとリチウムの挿入反応の速度を比較しました。その結果、ナトリウムの挿入速度はリチウムと同等であり、特に急速充電が可能であることが確認されました。具体的な測定では、ナトリウムの見かけの拡散係数は10-10 ~ 10-11 cm²/sで、リチウムに比べて高い移動速度を示しています。
低温環境での優位性
従来のリチウムイオン電池では、温度変化に敏感で性能が影響を受けがちですが、ナトリウムイオン電池は低温環境でも性能を維持することができるため、寒冷地での実用化に向けた大きな可能性を秘めています。
研究の背景と利点
ハードカーボンは、リチウムやナトリウムのイオンが出入りできるナノ細孔を持ち、体積変化が小さいという特徴があります。これにより、長期間にわたって安定した性能を発揮できる電池の開発が可能です。希薄電極法では、電極内の活物質が孤立し、個々の粒子に十分な量のイオンが供給されるため、高電流条件下でも性能を最大限に引き出せます。
この研究の成果は、2025年12月15日付の国際学術誌「Chemical Science」にも掲載され、「ChemSci Pick of the Week」にも選出されるなど、多くの注目を集めています。
さらなる展望
将来的には、ナトリウムイオン電池の急速充電技術を実用化し、大規模エネルギー貯蔵システムや電気自動車に向けた技術開発が期待されています。今後の研究により、ナトリウムイオン電池の性能が一層向上し、より広範な分野での利用が進むことが期待されます。
この研究は、文部科学省や日本学術振興会などの支援を受けて行われました。今後、ナトリウムイオン電池の技術革新に対する期待が高まる中で、本研究が持つ意義はますます重要になってくるでしょう。
会社情報
- 会社名
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学校法人東京理科大学
- 住所
- 東京都新宿区神楽坂1-3
- 電話番号
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03-3260-4271