氷河と水銀の関係
2026-05-21 17:01:35

氷河のクリオコナイトに潜む水銀ホットスポットの実態を解明

研究の背景



地球環境が変化し続ける中、特に気になるのが水銀汚染です。水銀は神経系や免疫系に深刻な影響を及ぼす有害物質であり、その大きな発生源は産業活動に由来します。地球温暖化の影響で、世界中の氷河が急速に融解している現在、水銀が氷河にどのように蓄積され、将来的にどれほど放出されるのかが懸念されています。

そのような背景の中、千葉大学環境リモートセンシング研究センターの竹内望教授を中心に、国際研究チームが動き出しました。ポーランド、イギリス、カナダ、イタリアといった多国籍のメンバーによるこのチームは、氷河表面に存在する黒色の堆積物、クリオコナイトに注目。彼らは、このクリオコナイトが水銀を効果的に貯蔵する役割を果たしていると認識し、世界各地の氷河を調査しました。

研究成果のポイント



研究チームは、北半球と南半球の39の氷河から130のサンプルを採取し、合計48の氷河を調査しました。その結果、以下の重要な発見がありました。

1. クリオコナイトにおける高濃度蓄積: 調査した全ての氷河から水銀が検出され、特にクリオコナイトから得られた水銀濃度は周囲の土壌や河川よりも10%以上高いことが判明しました。これは、氷河が強力な汚染物質のトラップとして機能していることを示しています。

2. 南北半球での差異: 北半球の氷河は、南半球よりも水銀汚染のレベルが高いことがわかりました。特にノルウェーのニガーズ氷河やアラスカの氷河では、約0.96 ppmと高い値が記録されました。この現象は、北半球の産業活動が影響を与えていると考えられています。

3. 生態系への影響: グリーンランドの氷河では、赤い雪を生み出す雪氷藻類からも水銀が検出されており、微生物へも水銀が蓄積されていることが初めて証明されました。氷河の融解によって危険な水銀が下流に流出することで、地域の生態系や人類に悪影響を及ぼすリスクが高まっています。

今後の展望



本研究により、クリオコナイトは地球規模の水銀循環において極めて重要な役割を果たしていることが明らかになりました。温暖化が進むと、これらの「ホットスポット」に蓄積された高濃度の水銀が一度に下流に流出し、最終的には人間に健康被害を引き起こす可能性があります。

この調査から得られた知見は、水俣条約に基づく国際的な水銀管理の重要性を再認識させるとともに、急速に変化する極地や高山環境について新たな視点を提供するものです。これからの環境保護活動に大いに役立つデータとなることでしょう。

用語解説


  • - 氷河: 極地や高山に堆積した雪から形成される流動する氷の塊で、堆積物や汚染物質を長期間保存します。
  • - クリオコナイト: 氷河表面に存在する黒色の堆積物で、有害物質を吸着する特性があります。これが氷河の融解を助長する要因ともなっています。


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