クラシック音楽の未来を考える新たな視点
渋谷ゆう子氏の新著『揺らぐ日本のクラシック歴史から問う音楽ビジネスの未来』が、2025年3月10日にNHK出版より発売される。本書は、日本のクラシック音楽が直面している厳しい現実を踏まえつつ、その未来を考察した重要な作品となっている。
日本の音楽シーンにおいて、クラシック音楽は収益が少ないコンサートや、助成金に依存したオーケストラの運営など、多くの課題を抱えている。同時に、地域間での文化のアクセスに大きな格差が存在することも見過ごせない。渋谷氏はこのような現実を踏まえ、なぜ日本でクラシック音楽が必要とされ、いかにしてその存続を図ることができるのかを問いかけている。
クラシック音楽と日本人の関わり
本書の冒頭では、日本人が古典音楽をなぜ愛し、その存続を選ぶのかに対する根本的な問いが立てられる。「日本人は本当にクラシック音楽が好きだね。いつ頃からなの?そして、なぜなの?」この問いは、文化と芸術が国のアイデンティティにどのように関わっているのかを考えさせる。
渋谷氏は、明治時代から現代に至るまで、日本のクラシック音楽の発展を興行としての視点から考察し、世界の他国と比較しながらその背景を探る。特に、アメリカやヨーロッパの事例を参考にしながら、資金調達の方法やビジネスとしての側面を詳細に分析している。
各章の内容
本書は全8章から成り、それぞれの章で異なる視点から音楽ビジネスの未来を掘り下げている。以下は章立ての概要だ。
1.
かくも厳しきクラシック: 日本のクラシック音楽が直面する現実の紹介。
2.
日本のクラシックの騒々しい夜明け: 明治以降のクラシック音楽の成り立ち。
3.
興行としての長い道のり: 音楽が興行としてどのように発展してきたか。
4.
ボストンにあった源流: アメリカのクラシック音楽と日本の関係。
5.
どうやって資金を調達するか: 他国の成功事例を参考にした資金調達の戦略。
6.
資金さえあればいいのか: 文化的な価値とビジネスの関係について。
7.
ビジネスと芸術は交わるか: クラシック音楽とビジネスの相互relations。
8.
社会にクラシックをつなぐには: 音楽が社会とどう結びつくかの模索。
著者の紹介
渋谷ゆう子氏は音楽プロデューサーとしてのキャリアを持ち、中でも文化事業のフロントラインに立つ人物である。大妻女子大学を卒業後、株式会社ノモスを設立し、様々な音楽文化の発展に寄与してきた。また、彼女は香川県民ホールの文化事業プロデューサーとしても活動しており、クラシック音楽に対する深い造詣がある。これまでに彼女が執筆した著作には、『ウィーン・フィルの哲学』や、『名曲の裏側』などがあり、どれも多くの読者に影響を与えている。
『揺らぐ日本のクラシック歴史から問う音楽ビジネスの未来』は、クラシック音楽に関する知識だけではなく、その未来に向けたビジョンを提供してくれる一冊だ。これからの音楽ビジネスを考える上で、必読と言える内容だろう。