水から手軽に水素を製造する新技術、革新続くグリーンテクノロジーの未来
国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は、画期的なグリーン水素製造技術の実証に成功しました。この技術は、0.9V以下の電解電圧で水から水素を分離して製造するというもので、従来の水分解法と比較しても経済的な利点が期待されています。これにより、水素を手軽に生産できる新たな道が開かれることになります。
光触媒―電解ハイブリッドシステムの開発
産総研のゼロエミッション国際共同研究センターでの研究により、光触媒と電解を組み合わせた流通型装置が開発されました。この装置に用いられた光触媒は、酸化タングステン(WO3)系で、10,000時間以上の疑似太陽光照射に耐えられる性能を持っています。また、光触媒の効率を最大限に引き出すため、小型の流通型装置が設計されています。
研究チームは、光触媒反応で生成されたFe2+イオンを効率よく使用しながら、水を水素と酸素に分解する方法を模索しました。これにより、水素生産に必要な電力消費が削減され、環境に優しいエネルギー源として期待が高まっています。
環境への配慮と経済性
水素は、燃焼時にCO2を排出しない点から、カーボンニュートラルのキーテクノロジーとして注目されています。特に、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを利用して製造されるグリーン水素は、環境への負担を減らすための重要な手段となります。しかし、これまでの水素製造方法は電力コストが高いため、大規模な導入が難しいという課題がありました。
産総研の新技術は、それに対する一つの解決策として位置づけられます。光触媒と電解反応のハイブリッドシステムを用いることで、低電圧での水素製造が可能になり、結果的にコストを削減できます。この技術が普及することで、より多くの事業者や家庭が水素を利用しやすくなるでしょう。
今後の展望
今後の研究では、光触媒の性能向上を目指し、長波長の光を有効に利用する技術の開発が進められます。また、大規模な実証試験や詳細な水素製造コスト試算を行い、経済的に現実的なグリーン水素製造技術の実現を目指していきます。
この成果は、2024年10月25日付の「ACS Applied Materials & Interfaces」にオンライン発表され、科学界での関心も高まっています。現在、産総研は引き続き、持続可能な社会の実現に向けた研究を推進しており、この技術が新しいエネルギー社会の礎となることが期待されています。
技術革新によって環境に優しいエネルギーの供給が現実になる未来に、私たちは今、足を踏み入れつつあります。