ダイヤモンド半導体の革新的進展
国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は、株式会社本田技術研究所(Honda)と共同で、次世代モビリティ向けにダイヤモンドパワーデバイスの革命的な進展を報告しました。この研究は、アンペア級の高速スイッチング動作を確認したもので、世界初の成果となります。
ダイヤモンドMOSFETの実証
本研究では、ダイヤモンドMOSFET(メタル・酸化膜・半導体電界効果トランジスタ)が大電流動作を実現し、立上り時間が32ナノ秒、立下り時間が19ナノ秒という優れた特性が確認されました。これにより、次世代パワーデバイスとしての可能性が高まり、さらなる応用が期待されています。
ダイヤモンド半導体の特徴とメリット
ダイヤモンド半導体は、その優れた物理的特性から、未来のパワーデバイスとしての期待が寄せられています。高い絶縁破壊電界、優れた熱伝導率、そして大きなバンドギャップを持つため、高温環境下でも性能を安定して発揮します。この特性により、エネルギー損失を低減し、小型で軽量なパワーエレクトロニクス機器の開発が可能となります。
研究の背景と目的
現在、カーボンニュートラルに向けた動きが進む中、自動車や電力網で使用されるパワーエレクトロニクスの需要が高まっています。しかし、現在主流のシリコンや硅化ケイ素、窒化ガリウムの半導体材料には、p型伝導が劣るという課題があります。これに対し、ダイヤモンド半導体はp型伝導を有するため、次世代の高効率な電力変換技術として研究が進められています。
研究のプロセス
研究チームは、基板のサイズを拡大したり、並列化技術を用いることで、アンペア級の動作ができるダイヤモンドMOSFETを開発しました。514個のMOSFET素子を並列接続した結果、高い歩留まりと安定した動作が確認され、次世代パワーデバイスとしての実用化への道が開けました。
今後の展望
ダイヤモンド半導体の実用化には、さらなる耐電圧や高電流密度の改善が求められます。研究者たちは、新たな研究テーマを追求し、次世代モビリティに向けた社会実装を目指しています。この技術が実現すれば、電気自動車や再生可能エネルギー分野において革新をもたらすでしょう。
結論
今回の成果は、次世代パワー半導体に革命をもたらす可能性を秘めており、今後のエネルギー効率化やカーボンニュートラル社会の実現に寄与することが期待されます。研究結果は、2025年の学術雑誌『Applied Physics Express (APEX)』に掲載される予定であり、国際会議での発表も计划されています。