岡山大学、テラヘルツ波による神経伝達物質の相互作用解析
国立大学法人岡山大学の王璡准教授を中心とする研究チームが、テラヘルツ波を利用した新たな研究成果を発表しました。今回の研究では、テラヘルツ波ケミカル顕微鏡(TCM)を駆使し、DNAアプタマーと神経伝達物質(セロトニンやドーパミン)の相互作用による表面電位の変化を高感度で測定し、可視化することに成功しました。これにより、生体分子の動的挙動についての理解が大きく進展しました。
研究の目的と方法
今回の研究の主な目的は、DNAアプタマーと神経伝達物質との相互作用メカニズムを解明することでした。具体的には、テラヘルツ波を用いてリアルタイムに表面電位の変化を観測する方法を確立しました。この技術の利点は何と言っても、既存の方法と比べて筋力や精度が高いことにあります。特に興味深いのは、AlphaFoldを利用した構造予測と計算モデリングのコンビネーションです。この手法によって、アプタマーと神経伝達物質間の関係がより明確になり、分子間の結合メカニズムが解き明かされました。
この新技術の実用化に向けて、研究者たちは様々な神経伝達物質に対する応用を模索しています。セロトニンやドーパミンの結合をリアルタイムで検出できる新手法は、神経疾患の診断において大きな可能性を秘めていると言えます。
研究成果の応用
この研究は、神経疾患の早期発見や個別化医療の実現に向けて重要なステップとされています。特に注目されているのは非侵襲的かつ高感度な診断技術であり、これにより患者への負担を軽減しながら、より正確な診断が可能になるでしょう。また、さまざまな疾患のバイオマーカーの発見にも寄与することが期待されています。
王璡准教授は「この技術を基にさらに多様な神経伝達物質の検出を目指し、研究を進めていきたい」と実現に向けた意気込みを語りました。彼は共同研究や新たなコラボレーションにも積極的で、関心のある方々からのコンタクトを期待しているとのことです。
論文の掲載と今後の展望
この研究成果は、2025年1月13日付で科学雑誌『Biosensors』に掲載されています。論文タイトルは「Mapping Surface Potential in DNA Aptamer–Neurochemical and Membrane–Ion Interactions on the SOS Substrate Using Terahertz Microscopy」です。このような優れた成果が生まれた背景には、王璡准教授の研究室だけでなく、日本学術振興会の支援もあるとされています。
今後、さらに多様なアプローチでの実用化が期待されるこの技術が、医療の現場にどのような影響をもたらすのか、注目が集まります。研究の進展が人々の健康増進や医療の効率化に役立つことを願うばかりです。