VRで恐怖を克服
2025-05-14 14:14:38

仮想現実がもたらす高所恐怖症克服の新たな可能性

仮想現実がもたらす高所恐怖症克服の新たな可能性



1. はじめに


近年、仮想現実(VR)が様々な分野で活用され、その効果が注目されています。その中でも、特に心理的な治療において、VRが新しい可能性を開くことが期待されています。国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)による研究は、VRを活用した高所恐怖症克服のメカニズムを明らかにしました。従来の方法とは異なる新しいアプローチが提示され、 PTSDや不安障害治療への応用も期待されています。

2. 研究内容の概要


本研究の主な成果は、VRを通じて飛ぶことができる体験をすることにより、高所に対する恐怖反応が低減するということです。研究グループは、高所恐怖症傾向のある参加者を対象にVR実験を行い、自由に飛行するという行動が、恐怖感情の生理的および主観的反応をどのように変化させるかを検証しました。

実験では、参加者はVR環境内で2つの異なるタスクを実施しました。一つは「高所歩行タスク」で、もう一つは「自由飛行タスク」です。飛行群はVRで自由に低空を飛行し、コントロール群は飛行群の体験を受動的に視聴しました。その後、参加者の脳や身体の反応を計測しました。

3. 結果


実験結果からは、飛行群の参加者はコントロール群に比べて、2度目の高所歩行タスクにおける恐怖反応が明らかに低下することが確認されました。これにより、参加者が「自分は飛行できるので落下しても危険ではない」と感じることで、恐怖が軽減されることが伺えます。

具体的には、脳の恐怖反応を示す生理的データ(発汗量)や主観的恐怖スコアの両方が、飛行体験後に顕著に低下したのです。これは、従来の「曝露療法」に依存せず、行動に基づいた予測を通じて恐怖を克服する可能性を示唆しています。

4. 従来研究との違い


従来の心理学研究では、恐怖を克服するには恐怖対象に対する曝露が必要だとされてきました。しかし、この研究は「行動による予測」—つまり、「自らが行動することで状況を安全にすることができる」という認識が、恐怖反応を低減させる重要な要因であることを明らかにしました。

従来の訓練方法に比べ、VRによる体験が心理的な枠組みを変える可能性があります。体験を通じて、頭の中での「安全状態」への移行が可能となり、これは治療法として非常に有用です。

5. 今後の展望


今後は、この成果を基に、実際の治療においてどのように活用できるかを検討する必要があります。特に高所恐怖症に特化した治療法を開発することで、多くの患者の支援ができるかもしれません。さらに、PTSDや他の不安障害の治療における応用も検討されています。
今回の研究は、仮想現実技術の進化とともに、新しい心理的治療の方法が確立される可能性を秘めています。今後の研究の進展に期待が寄せられます。


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