京大病院の新たな挑戦
2024-12-09 11:28:57

遺伝性血管性浮腫患者予測AIモデルの有用性を検証した京大病院の取り組み

遺伝性血管性浮腫患者予測AIモデルの進展



京都大学医学部附属病院(以下「京大病院」)が取り組む遺伝性血管性浮腫(HAE)患者予測AIモデルの有用性が、京都大学大学院医学研究科および医学部の医の倫理委員会の承認を受けて検証されました。京都大学と日本アイ・ビー・エム株式会社(以下「日本IBM」)、さらには一般社団法人遺伝性血管性浮腫診断コンソーシアム(以下「DISCOVERY」)との協力により、2022年12月から開始されたこの研究は、2023年9月に学術誌「JMIR Medical Informatics」で発表されています。

HAEの早期診断に向けた新たなアプローチ



HAEは非常に希少な疾患であり、推定では5万人に1人の割合で発生するとされています。そのため、診断が遅れることが多く、患者は長い間正しい治療を受けられない事例も少なくありません。DISCOVERYは、HAEと診断されずに苦しむ患者を救うために、医療従事者や製薬企業と協力し、早期診断を目指す取り組みを行っています。このAIモデルは、医療データを基に得られた情報をもとにHAEの潜在的患者を特定するための研究と開発が進められています。

これまで、HAE患者予測AIモデルは、特にデータ量の豊富なアメリカの電子カルテデータを基に構築されてきましたが、日本の医療現場への適用には国内の電子カルテデータでの検証が欠かせませんでした。京大病院が保持している電子カルテデータを活用し、DISCOVERY及び日本IBMが開発したAIモデルの適用結果について、予測精度や特定された患者の傾向などを分析しました。

検証結果とその意義



今回の検証では、HAEの疑いがあると識別された患者群の中で、実際にHAEの確定診断または疑いが持たれている患者が約5人に1人という高い割合で見つかりました。この結果は、HAEの診断記録がない患者に対しても、今後の早期診断に寄与しうる可能性を示しています。これは、特に症状に苦しむ患者にとって大きな意義があるといえるでしょう。

京大病院血液内科の准教授である山下浩平氏は、「HAE患者予測AIモデルは海外のデータに基づいて構築されたもので、国内での適用性には懸念があったが、今回の研究で一定の有用性が確認できた。潜在患者の発見に貢献している可能性が高い」と述べています。

今後の展望



今回の研究成果は、HAEに関する理解を深めるだけではなく、今後の予測AIモデルのさらなる発展にも寄与すると考えられます。国内医療界における新たな知見として、希少疾患に対する診断や治療の在り方を見直す契機となるでしょう。AI技術の進展により、今後の診断方法が飛躍的に改善されることが期待されています。医療現場において、AIがどのように活用されていくのか、その進展を引き続き注視していきたいところです。


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