新たな量子制御技術
2025-12-09 14:17:23

大阪大学とキュエルが提案する新たな量子コンピュータ制御技術とは

大阪大学とキュエルが切り開く未来の量子コンピュータ



最近、大阪大学とキュエル株式会社の研究チームが、イオントラップ量子コンピュータにおいて重要な課題の一つである電極制御の拡張性に関する革新的な解決策を発表しました。特に、時分割多重化(TDM)を用いた新たな電圧制御方式を開発し、実験的に成功を収めたことは、量子コンピュータ研究において画期的な進展と評価されています。

イオントラップ量子コンピュータとその課題



イオントラップ量子コンピュータは、長いコヒーレンス時間と高い量子ゲート忠実度を兼ね備えており、量子計算の実現に向けて非常に有力な候補とされています。しかし、複数のイオンを制御するためには、多数の電極が必要となるため、配線や制御回路が複雑化し、これがスケーラビリティの障壁となっていました。実際、現状の制御方式では、数十個のイオンを扱うだけでも数百本もの配線を要し、量子コンピュータの大規模化が阻まれていたのです。

新しい制御方法の開発



この課題を乗り越えるために、研究チームはTDM方式を採用した新しい電圧制御システムを開発しました。このシステムでは、デジタル・アナログ変換器(DAC)から出力されるTDM信号を用い、デマルチプレクサ(Demux)を介して各電極に適切な電圧を配分します。実験では、二台のDACを使用し、10チャネルの制御システムを構築し、⁴⁰Ca⁺イオンの捕獲と輸送を実現しました。

この新技術により、従来の方法と比較して電極制御のスケーラビリティが大幅に向上し、今後の大規模イオントラップ量子コンピュータの実現に向けての重要な基盤が築かれました。

今後の展望



研究チームは今後、デマルチプレクサを真空内に統合するための研究や低温での動作検証を進める予定です。この研究が成功すれば、さらなる高密度化や低消費電力化が期待され、将来的には大規模な量子デバイスの制御が現実のものとなるでしょう。

科学界からの評価



今回の研究成果は、「Applied Physics Letters」誌に掲載され、さらに「Scilight」にも取り上げられるなど、大きな注目を集めています。論文の独創性と技術的意義が高く評価されたことは、研究チームにとっても大きな励みとなるでしょう。

まとめ



キュエル株式会社と大阪大学のコラボレーションによるこの新しい量子コンピュータの制御技術は、今後の量子計算の進展に寄与することでしょう。イオントラップ技術の革新が、量子コンピュータの未来をどのように切り開くのか、今後の動向に注目が集まります。

また、本研究は文部科学省や科学技術振興機構、JSTムーンショット型研究開発事業の支援を受けて行われました。これにより、公的な支援制度の重要性も再確認できる成果です。


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会社情報

会社名
キュエル株式会社
住所
東京都八王子市明神町4丁目7-14八王子ONビル5階
電話番号

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