食文化の革新をもたらす『鮨なんば』のすし
予約が困難なことで知られる東京・日比谷の『鮨なんば』。このお店を代表するのが店主の難波英史氏です。彼はこの度、自身のすしに対する考えや技術を体系的にまとめた専門書『すしは進化する ― 変わりゆく江戸前、鮨なんばの表現 ―』を出版しました。この書籍はただのすし本にとどまらず、現代の職人に必要な理論や実践を詳しく解説しています。
書籍内容の概要
本書は「温度による握りの最適化」を中心に、すしダネの仕込みや握りの技術、酒肴、コース構成、素材の選び方といった多岐にわたるトピックをカバーしています。特に注目すべきは、すし職人が実務に落とし込むことができるよう、詳細な工程写真や理論解説が含まれていることです。
例えば、温度設計を体系化した内容は業界でも珍しく、握りにおける微妙な温度差についての理解を深めるものになっています。お楽しみの前に彼のすし、温度が鍵となる握りの提供タイミングまでもが理論化されています。
出版の背景
近年、すしに関する書籍が増えている中、多くは料理店のブランド紹介やグルメガイドの形式を取っています。しかし、実際にすし職人として活躍するには、実践的な技術書が必要だという課題があったと難波氏は言います。
『鮨なんば』が実践する独自のスタイルは、他の料理ジャンルからのインスピレーションを取り入れながら進化してきました。「伝統を尊重する一方で、自分にしかできないすしを確立することが重要でした。」と彼は語ります。この言葉からも、その哲学が表れています。
目次と各章の内容
1章では、温度を中核としたすしの考え方と技法、コースの組み立て方法が紹介されています。続く2章では、取扱う魚介の仕込みと握りの技術が詳細に解説され、すぐに実践できる技術としてまとめられています。
3章では、実際の食材の扱いについて、豊洲市場や産地取材を元に詳しく紹介されており、選び方や見極め方に関する知識が網羅されています。4章では、すし職人としての経営哲学や経験を読み物として披露し、外国人のすし愛好者にもわかりやすくするために英文も併記されています。
難波英史氏について
著者の難波英史氏は1974年東京都に生まれ、20歳で職人の道に入りました。様々な店舗での経験を経て、2007年に荻窪で『鮨なんば』を開業、2011年には阿佐ヶ谷へ、2018年には日比谷に移転、さらに四谷にも支店を展開しています。彼の握りの温度設計は国内外で高く評価され、多くのメディアに取り上げられています。
書籍情報
- - 書名:『すしは進化する ― 変わりゆく江戸前、鮨なんばの表現 ―』
- - 著者:難波英史
- - 発売日:2025年11月27日
- - 仕様:B5変形判 / カラー192ページ・モノクロ32ページ・一部英文併記
- - 価格:5,200円+税
- - 出版社:旭屋出版
この『すしは進化する』は、すし文化を次世代に伝えるための貴重な資料であり、すしを学ぶ人々にとって必携の一冊です。