新規ペプチド配列の発見の背景
岡山大学、東京科学大学、東京大学による共同研究チームは、タンパク質合成に関わる「難翻訳」配列を大規模に探索する新たな手法を開発しました。この手法を用いて、大腸菌のゲノムから新しい難翻訳配列を同定すべく取り組みました。本研究は、2025年3月8日に権威ある学術雑誌「Nature Communications」に掲載され、多くの注目を集めています。
難翻訳配列とは
生命を構成するタンパク質は、DNAに記された遺伝子を基にリボソームによって合成される「翻訳」という過程を経ます。通常、リボソームはさらに多くの編集を必要とせずに多様なタンパク質を合成できますが、一部のアミノ酸配列はその過程を妨げる「難翻訳」特性を持っています。この新たな研究においては、特にペプチド名で呼ばれるPepNLとnanCLの二つの難翻訳配列に焦点を当てています。
新たな難翻訳配列の同定
本研究チームは、ペプチドPepNLが翻訳中にリボソーム内で特有の「ヘアピン」状の構造を形成し、タンパク質の合成を阻害することを確認しました。この現象は、細胞内のアミノ酸濃度が一定以上であれば、終止コドンをスキップすることでPepNLが持つ翻訳阻害効果が回避されることを示しています。この発見は、難翻訳配列がどのようにタンパク質合成に影響を与えるかを解明する重要な一歩となります。
リボソームの構造解析
さらに、クライオ電子顕微鏡を用いた解析により、PepNLペプチドがリボソーム内で形成する異常な折れ曲がりが、翻訳を停止させるメカニズムの詳細を明らかにしました。この発見により、難翻訳配列に関する理解が一層深まることでしょう。
研究の意義と今後の展望
今回の研究成果は、難翻訳配列の理解がもたらす新たな視点を示しています。特に、遺伝子発現の制御や効率的なタンパク質生産に役立つ可能性があり、今後の医療やバイオテクノロジーにおいて重要な役割を果たすことが期待されます。
本研究は日本学術振興会をはじめとする多くの団体からの支援を受けて進められており、今後さらなる研究が予定されています。新しい発見が多くの科学者に刺激を与え、未来の研究の発展に繋がることを願っています。
参考文献
- - 論文名: A mini-hairpin shaped nascent peptide blocks translation termination by a distinct mechanism
- - 掲載紙: Nature Communications
- - DOI: 10.1038/s41467-025-57659-z
- - 研究の詳細についてはこちら: Nature Communications