高精度校正システムの開発
国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)の研究チームが、基準球面レンズの表面形状をわずか4.3nmという不確かさで高精度に校正できる新しい技術を開発しました。この技術は、光学素子の高度な製造や品質管理に寄与することを目的としています。
産業界への貢献
この技術の鍵となるのは、ランダムボール法の導入です。この手法によって、さまざまなFナンバーに対応する基準球面レンズを、簡単かつ効率的に校正できるようになりました。従来の校正方法では、同じFナンバーを持つ球面レンズを二つ用意する必要がありましたが、新技術により、その必要がなくなりました。
校正プロセスの詳細
基準球面レンズは、光学系の主要な部品であり、その形状精度は画像処理技術に直結します。従来の方法では、形状測定が非常に複雑で、精密なアライメントが求められていました。しかし、新たに確立された不確かさの評価法によって、ミスアライメントの影響を詳細に解析し、測定誤差を大幅に低減しました。
ランダムボール法は、基準球面レンズの周りに球形を配置し、その表面全体の偏差を測定するというユニークなアプローチです。これにより、実質的に真球のような結果を得ながら、測定コストと時間を削減します。基準球面レンズの精密調整が不要であるため、大幅に作業効率を向上させることが可能です。
より多様な基準球面レンズの校正
この技術の導入により、光学部品メーカーはより多様な基準球面レンズの校正ができるようになります。これにより、高精度な光学素子の開発と、製品の品質管理の向上が期待されています。また、ユーザーが自身のレーザー干渉計を使用している場合にも、今回の技術が適用されるため、精密な調整が求められなくなることが大きな利点です。
今後の展望
今後、産総研では、標準供給を行うことを視野に入れ、さらに簡便な校正手法を開発する計画です。また、今回の技術を製造業界に広く展開し、国際的な計測基準へのトレーサビリティも確立する予定です。
この研究結果は、2024年10月24日に『Optics and Lasers in Engineering』に掲載されました。今後の光学技術の進展に寄与することが期待されます。