Arent、建設ドットウェブをグループ化
株式会社Arent(東京都港区)が、2025年10月29日の取締役会で、建設ドットウェブの発行済株式の一部を取得し、完全親会社化を決定した。このM&AはArentの第4弾の試みであり、過去最大規模の案件となる。
具体的には、Arentは建設ドットウェブを簡易株式交換により完全子会社として統合する。この統合により、Arentの展開する設計・施工領域に加え、施工後の経営・管理プロセスにもDXやAI技術を活かした支援を強化する。
アプリ連携型プラットフォーム構想
Arentは、業務のシームレスなデータ連携を実現する「アプリ連携型プラットフォーム」を目指している。これは各業務ごとに特化したアプリ(SaaS)を導入し、それらをAPIで連携させることで、業務の効率化を図る手法である。
例として、建設現場で使用される原価管理ソフト「どっと原価シリーズ」と、工程管理ツール「PROCOLLA」とのデータ連携が挙げられる。この連携により、ユーザーは現場と経営の間で情報を即座に活用でき、業務のスムーズな進行が可能となる。
M&A戦略の背景
これまでに3件のM&Aを成功させたArentは、各分野の専門企業との連携を視野に入れた戦略を進めている。特に「暗黙知を民主化する」という理念のもと、建設業界全体のDXを推進することを目指している。このアプローチにより、クライアント企業と共同で課題解決に向けた活動を展開しており、設計から経営までを一手に支援する体制を構築する。
ArentのM&A戦略の一端として、今回の建設ドットウェブの子会社化は、施工や経営管理領域の拡充に貢献すると期待されている。この戦略は、業界特化型ソフトウェア企業を対象にした申し出に基づくもので、さまざまな独立性を保ちながら長期的な成長を支援するモデルを参照している。これまでに、株式会社構造ソフトおよび株式会社PlantStreamなど、特定技術を持った企業とのM&Aを進めており、それぞれの専門性を活かしたシナジーを形成してきた。
建設ドットウェブの強み
建設ドットウェブは「どっと原価シリーズ」を通じて工事原価管理システムの分野で広く認知されており、主要会計ソフトウェアや勤怠管理システムなどとの連携により、業界全体のバックオフィスのDXをリードしている。Arentはこれにより、施工後の経営データまで広くカバーできる体制を整える。
また、PROCOLLAとのデータ連携も現実化し、より高精度の工程計画や実績に基づく改善施策の導入が可能となる。今後、独立したブランドとしての成長を重視しつつ、ArentのAI技術を活用して新機能の開発や、SaaS間のデータ連携を実現し、経営分析を支える共通データ基盤の構築に向けた努力を続ける。
業界の未来に向けて
熟練技術者の減少や生産性向上の必要性など、建設業界は多くの課題を抱えている。Arentグループは、これらの専門領域の企業との連携を通じて、持続可能な業界DXモデルの構築に向けた努力を重ねていく。このアプリ連携型プラットフォームの進化によって、建設業務の効率化が進み、ユーザーにとってもより使いやすいサービスの提供が期待される。
全体として、アプリ連携型プラットフォームを中心とする取り組みは、建設業全体の生産性の革新につながり、業界全体をデジタル化する時代の先駆けとなることを目指しています。