せん妄予防の新研究
2024-08-19 15:22:05

スボレキサントで高齢者のせん妄発症を予防する新たな試み

スボレキサントで高齢者のせん妄発症を予防する新たな試み



概要


順天堂大学医学部附属練馬病院の八田耕太郎教授を筆頭とする研究チームが、オレキシン受容体拮抗薬であるスボレキサントを用いたせん妄予防に関する第Ⅲ相試験の結果を発表しました。この試験は全国50の施設で実施され、高齢者のせん妄発症抑制に関する重要なデータが得られました。

背景


高齢化社会の進展に伴い、せん妄の発症が増加しています。入院する75歳以上の患者のうち3人に1人がせん妄を経験していると言われており、これは手術や治療の妨げとなる上、転倒や認知症のリスクを高め、医療費を押し上げる要因ともなります。そこで、効果的な予防策が求められていました。

研究の目的と方法


本研究は、スボレキサントを用いてせん妄の発症を予防することを目的として、無作為化・二重盲検方式の試験が行われました。対象となったのは、急性疾患や手術のために入院する高齢患者で、軽度の認知機能障害や既往歴のある患者が選ばれました。参加者には、スボレキサント15mgまたはプラセボを無作為に割り付け、入院期間中に実施しました。

結果


101名の参加者にスボレキサントが投与された結果、せん妄の発症率は16.8%となり、対照群のプラセボ投与群(26.5%)と比較すると発症率が低下したものの、統計的に有意な差とはなりませんでした。しかし、さらなる解析によって、特に手術や治療の妨げとなる過活動型および混合型せん妄の発症率は、有意に低下することが示されました。この研究により、スボレキサントのせん妄予防効果が示唆され、今後の臨床現場における大きな影響が期待されています。

今後の展望


本研究の成果を踏まえ、今後は睡眠・覚醒リズムの障害だけでなく、炎症や酸化ストレスに着目した新たな薬物療法の開発も検討されています。これは、せん妄を予防することで認知症の発症リスクを低下させ、医療費の削減にも寄与することが期待されているため、社会全体に利益をもたらす可能性があります。

まとめ


スボレキサントのせん妄予防に関する試験が成功裡に進行し、その成果が科学界において注目を集めています。八田教授は、この研究が患者と医療者の双方により安全な医療環境を提供する一助になればと願っています。この重要な研究成果は、JAMA Network Open誌にて2024年8月に発表予定です。


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