人々の数学理解を問い直す:新たな教科書
近年、多くの日本人が受けている数学教育には、見過ごされている重要な問題が存在します。それは、数学用語の誤訳です。この問題に焦点を当てた本書『無理数は、どこが無理なのか ~みちはた公司の主張と雑談~』は、著者であるみちはた公司氏が自身の経験をもとに、数学を学ぶ楽しみ方や新たな理解を促してくれる一冊です。
誤訳とその影響
本書では「無理数は、どこが無理なのか?」という問いを中心に、数学教育の中で何が問題になっているのかを明らかにしています。筆者は、日本語で数学を学ぶ中で多くの人が更なる理解を得るために必要な正確な情報を得られていないと指摘します。明治維新以降の西洋数学の翻訳により、日本語の数学用語がどのように創出され、なぜ誤解を生む結果となったのかを深掘りしていきます。
例えば「無理数」という言葉の根本に迫ることで、数学の本質を分かりやすく捉える手助けをしてくれます。著者は、これまで当たり前に思っていた数式や用語がどれほど誤解を誘発する要因なのかを解説し、新たな視点から数学を再考させてくれるのです。
幅広い読者層にアピール
本書は学生だけでなく、大人や教員にも読まれています。数学に苦手意識を持つ学生はもちろんのこと、自身の子どもからの質問に困惑する親や、日々授業を行う現役教師にとっても役立つ内容が詰まっています。著者のユーモアあふれる語り口は、堅苦しい数学の議論を軽やかなものとし、読んでいるうちに身近に感じられることでしょう。
「無理数って一体何だったの?」といった素朴な疑問から始まり、誰もがかつて学んだ数式をもう一度思い出すきっかけになります。想い出の中に埋もれていた数学の楽しさを再発見することは、数学を通じた学びの意義を再確認する良い機会です。
著者の経歴と背景
みちはた公司氏は、1966年に京都市で生まれ、高校数学教員として30年以上のキャリアを持つ異色の経歴の持ち主です。その経験から、教育現場で直面する問題に対する深い洞察を持っています。また、100キロマラソンを完走した経験や漢検準一級取得の実績は、彼の多様なバックボーンを示しています。彼自身も趣味で落語鑑賞やギターを楽しむなど、バイタリティに満ちた人物です。
数学が持つ魅力を再発見
本書は、ただの数学解説書ではありません。著者が提案するのは、難解な理論に抵抗を持っている人でも、容易に理解できるアプローチです。読み進める中で「数学とは実はこういうものだったのか!」という新しい驚きとともに、学ぶことの素晴らしさを再認識できること請け合いです。
公式な知識だけでなく、数式が生まれた背景や人々の思考法に触れることで、より深い理解が得られるでしょう。
書籍情報
- - 書名: 『無理数は、どこが無理なのか ~みちはた公司の主張と雑談~』
- - 著者: みちはた公司
- - 出版社: パレード
- - 発売日: 2024年10月29日
- - ISBN: 978-4-434-34623-1
- - 価格: 1,430円(税込)
- - 詳細: Paradebooks
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