競走馬の感染症対策に向けたタンパク質バイオマーカーの発見
東京科学大学発のベンチャー企業、aiwell株式会社(以下、aiwell)が、競走馬が罹患する難治性の細菌感染症「ロドコッカス感染症」に関するタンパク質バイオマーカーを発見しました。この発見は、競走馬の早期診断や治療に向けた重要な一歩となるでしょう。
ロドコッカス感染症とは
ロドコッカス感染症は、特に生後1〜6ヶ月の仔馬に深刻な肺炎や腸炎を引き起こす病気であり、その診断が遅れると致命的な結果を招くことが多々あります。この感染症は、土壌中に生息する病原菌によって引き起こされ、消毒が難しいため、厄介な問題とされています。北海道の軽種馬生産地では、仔馬の罹患率が約5%、致死率は約8%と報告されていますが、特にアメリカやチリなどでも多数の病例が発生しており、競馬産業全体の経済的損失が大きな課題となっています。
バイオマーカーの発見とその意義
aiwellは、住友商事北海道株式会社との共同研究を通じて、ロドコッカス感染症に特異的なタンパク質バイオマーカーを発見しました。具体的には、感染個体の血液を用いてAIプロテオミクス技術を活用し、疾病特異的に見られるタンパク質を定量的に分析しました。この結果、感染個体と非感染個体のプロテオーム画像が異なる集団に分類され、確かなバイオマーカーの候補が確認されました。
確立された技術
同社が用いるAIプロテオミクスは、東京科学大学の教授によって開発された技術であり、二次元電気泳動とAIによるデータ解析を組み合わせることで、迅速かつ正確なバイオマーカーの探索が可能となります。このアプローチにより、従来の方法に比べて効率的な検査キットの開発や創薬への応用が期待されています。
経済的影響と今後の展望
ロドコッカス感染症による経済的損失は非常に大きく、特に増加する医療費や予防策にかかる費用は、馬主や牧場にとって深刻な負担です。aiwellは、発見したバイオマーカーを用いることで、これらの問題を解決に導くことを目指しています。将来的には、競馬ファンや馬産業全体に貢献する技術を提供し、競走馬の健康を守るための新たな診断法が広がることを期待しています。
会社情報
aiwell株式会社は、東京都千代田区を拠点にする企業で、2018年に設立されました。動物や植物のタンパク質解析を行うAIプロテオミクス技術を駆使し、広範囲な市場ニーズに応えています。今後も、競走馬の健康管理の向上や創薬のための研究を続けていくことでしょう。私たちの大切な競走馬を守るため、新たな技術の進展に注目が集まります。