20代・30代の女性における腸内細菌と低体重の関連性
近年、若年層の女性における低体重問題が社会的な関心を集めています。藤田医科大学とシンバイオシス・ソリューションズ株式会社が共同で行った最新の研究によって、特に20代から30代の低体重女性の腸内細菌叢に関する新たな知見が明らかになりました。この研究は、低体重に伴う健康リスクや改善の手法に関して重要な示唆を提供しています。
研究の背景と目的
日本では若年女性の低体重が増加しており、これによる健康リスクが懸念されています。具体的には、月経不順や、不妊症、さらには将来的な骨粗鬆症リスクの増加などが挙げられます。これまでの研究では、低体重女性がビタミン不足に陥りやすいことが確認されていますが、腸内細菌叢の状態については明らかにされていませんでした。
本研究では、20–39歳の低体重女性と正常体重女性を対象に、その食事パターンと腸内細菌叢の多様性を比較し、どのように関連しているのかを調査しました。これにより、低体重女性に共通する腸内環境の特徴を明らかにし、今後の食事介入や治療法に生かすことを目指しています。
研究の進め方
対象となったのは、20–39歳の女性80名で、40名ずつ低体重群(BMI < 17.5)と正常体重群(BMI 18.5以上)に分けられました。研究チームは、食事の多様性や摂取エネルギー、栄養素についての調査を行い、それとともに腸内細菌の多様性を比較しました。
研究の結果、食事に関しては低体重群と正常体重群の間で有意差は見られませんでしたが、腸内細菌叢の多様性に関しては明らかに違いがありました。低体重群の腸内細菌叢は多様性が低く、炎症に関連する菌が多数存在していることが確認されました。このような腸内環境は、体重管理や健康促進において一つの課題となるでしょう。
腸内細菌叢における多様性の変化
腸内細菌のα多様性は、低体重群で有意に低下し、これは腸内環境の乱れを示します。一方、腸内細菌のβ多様性は、低体重群と正常体重群の間で明確に異なっており、特に炎症に関与する菌が低体重群で増加しているとの結果も見られました。具体的には、BacteroidesやEnterocloster、Erysipelatoclostridiumなどが増加し、正常体重群ではDoreaが優位であることがわかりました。
結論と今後の展望
研究結果は、低体重女性において腸内細菌叢の多様性の低下が見られる一方、炎症傾向にある菌が増加していることを示唆しています。これは、単に食事の改善を行うのみならず、腸内細菌叢をターゲットとした食事療法が有効である可能性を意味します。プロバイオティクスやプレバイオティクスを利用した療法によって、腸内細菌の質を改善し、低体重の管理に寄与できるかもしれません。
今後さらなる研究を進めることで、若年女性の低体重に対する効果的な対策が見出されることが期待されます。研究成果は、スイスの学術ジャーナル「Nutrients」に発表され、多くの注目を集めることが予想されます。
参考文献
- - 論文タイトル: Gut Microbiota α- and β-Diversity, but Not Dietary Patterns, Differ Between Underweight and Normal-Weight Japanese Women Aged 20–39 Years
- - 著者: 和田理紗子、平岩衣里、大熊佳奈、山田雅子、後田ちひろ、出口香奈子、成瀬寛之、増山博昭、飯塚勝美
- - 発表号: Nutrients 2023年10月28日号
本研究成果に関する問い合わせは、藤田医科大学医学部臨床栄養学主任教授の飯塚勝美までご連絡ください。