深刻な緑内障問題をAIで解決する新たな挑戦
最近、自治医科大学が発足させたベンチャー企業、DeepEyeVision株式会社が注目を集めています。この会社は、AI技術を駆使して、日本における緑内障診療の精度を向上させ、患者の負担を軽減する新たな研究開発に取り組むことを発表しました。日本では緑内障が40歳以上の人に20人に1人の割合で見られ、特に中高年における失明の原因として最も多い疾患です。急激な高齢化が進んでいる様子からも、この問題はさらに深刻化しています。
1. 研究開発の背景と課題
緑内障は、早期発見と治療が重要な疾患である一方、完治が望めないため、患者は一生通院を続ける必要があります。特に視野検査は高い集中力を要し、経済的、精神的な負担が大きいという課題があります。このような状況において、医療機関も15分程度の視野検査に多くのリソースを割く必要があり、医療スタッフが負担を感じている原因ともなっています。
2. AI技術による解決策
DeepEyeVisionでは、AIを用いて初期緑内障の診療精度の向上と検査の効率化に取り組む予定です。具体的には、OCT(光干渉断層計)で撮影した目の断層画像を分析し、視野を推測するプログラムを開発します。この手法により、視野欠損の把握に必要な時間を大幅に短縮し、患者と医療機関双方の負担を軽減できると期待されています。さらに、得られたデータを患者ごとに蓄積することで、医師による治療方針の策定を支援する方法も模索しています。
3. 学術機関との連携
この新しい取り組みを推進するために、DeepEyeVisionは医師の古山誠氏を顧問に迎え、自治医科大学や筑波大学などの学術機関、国内外のOCT関連企業とも技術交流を始めています。こうした人脈を活用することで、AIを利用した緑内障診療の社会実装を目指しています。
4. シンポジウムでの発表とデモ
また、DeepEyeVisionの顧問である古山誠氏は、第35回日本緑内障学会に登壇し、AIモデルに基づく緑内障診療の支援方法について発表する予定です。発表内容は「3次元AIモデルを活用した緑内障診療支援」であり、学会会場でのデモンストレーションも行われる予定です。
5. エキスパートの見解
筑波大学の大鹿哲郎教授や山梨大学の柏木賢治教授など、専門家からもDeepEyeVisionの研究開発への期待が寄せられています。特に、高齢化が進む日本においては、緑内障患者の負担を軽減し、治療成績の向上が求められています。DeepEyeVisionの取り組みがこれらの社会的課題の解決に寄与することが期待されます。
6. 会社概要
DeepEyeVisionは、筑波大学の髙橋秀徳教授が設立した医療AI技術を用いたベンチャー企業で、眼科だけでなく様々な医療分野の高度化を目指しています。栃木県下野市に本社を構え、医療機器の開発などの許可を得て活動しています。ウェブサイトは
こちらから確認できます。
このように、AIを活用した努力が続けられることで、日本における緑内障の診療が一層進化し、患者の生活が安心できるものになることを祈るばかりです。